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Itaru Tomita / 冨田到
@itarutomy
2026.08.11 11:48
Microsoftの研究チームが、画面を操作するAIエージェント(computer-use agent)を訓練するための合成環境「Echoverse」を発表した(https://arxiv[.]org/html/2607.28074v1)。 AIエージェントは、自分の操作が実際に何かを変化させる場でしか学習できない。でも本当に鍛えたい相手はメールや銀行、カルテのようにログインが必要で状態が刻々と変わる(stateful)アプリで、本物のサービスを壊すわけにはいかない。そこでデータベースごと丸ごと動く合成環境を代わりに使う。 これまでの手法はこうした合成環境を大量に作ることに力を入れてきたが、この論文は数より深さだと主張する。レシピサイトAllrecipesを模した環境で試したところ、浅い環境で訓練すると実際にベースモデルより性能が落ちてしまった。逆に、権限やエラー処理が本物通りに動き、最初の選択が後の展開を左右するような深い環境で訓練すると、同じドメインで性能が上がった。 合否判定にも工夫があり、スクリーンショットをAIに見せて「できていそうか」を判定させるのではなく、実際のデータベースの差分を正解データと突き合わせる「grounded grading」を採用している。エージェントが完了したふりをしても見抜ける仕組みだ。 結果、先ほど例に挙げたメールや銀行を再現したEchoMailやEchoBankなど10個の業務ドメインに、日付ピッカーなど特定の操作だけを鍛える2個の環境を加えた計12環境、2万1009本の実行履歴を使って90億パラメータのモデル(Qwen3.5-9Bベース)を訓練したところ、14項目の評価平均でベースモデルの36.5%から67.1%まで伸び、この訓練データを作った教師モデルGPT-5.4の80.7%まで14ポイント差に迫った。 面白いのは、EchoStay(民泊予約の模擬環境)で宿泊人数を指定する操作が正しく機能しないというバグを1つ直しただけで、それまで完了できなかった予約タスク24件のうち15件が新たに通るようになったこと。環境のバグ修正が、そのまま多数のタスク改善につながる。 さらにこの合成環境はそのまま強化学習の訓練場にもなる。正確にリセットでき、並列実行でき、報酬がデータベースの状態に基づくため信頼できるからだ。環境の数を増やすより、モデルが実際につまずく場所を見つけて環境ごと直し続けるループが効くという結論。
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