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忒修斯的船板
@Arcadia_Bao
前记者,现专心研究故事写作 & AI。 写作既可为变现,也可为疗愈,也可为助人,择一即可。
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「みやこ…見苦しいぞ」 ⠀ 私のスマートフォンを印籠の如く掲げたまるくんが、崩れ落ちた私を見下ろしてため息をついている。 愛する人を守れる立派な騎士となるために、揺るぎなき精神と微笑みを手に入れたはずだったのに。 ⠀ 「この私が……負けた?」 ⠀ ありえない。私は孤独で誰にも靡かない、鋼の女なのに。 ⠀ 「お、おい!みやこ!」 ⠀ まるくんの手から強引にスマホを奪い返した私は、制止を振り切って家を飛び出した。己の軟弱な精神が許せない。どうして私はこんなにもちっぽけなのだろうか。あの人はあんなにも気丈で美しくしなかやで、しかし繊細で、こぼれ落ちそうなぐらいきらきら輝く瞳は私の心を射抜き、甘い声を紡ぐ唇はそっとかぶりついた瞬間に果汁が漏れ出てしまいそうなほどにみずみずしく、ホワイトフローラルの香りを放つ髪は弧を描きながらさらさらとなびき、白魚のような指はひんやりしていていながらも私の心までを包むあたたかさとやわらかさがあって…… ⠀ 「ご注文お決まりでしょうか?」 ⠀ そう声をかけられて我に帰る。あわてて周囲を見渡すと、目の前には季節のフルーツをふんだんにつかったパフェが所狭しと並ぶメニューが置かれていた。どうやら私は無意識のうちに、あのパフェ屋さんへ来ていたようだった。 ⠀ 「あ……えっと、いちごのパフェをひとつ、おねがいします」 「いちごのパフェですね。かしこまりました」 ⠀ 厨房へ戻っていく店員さんを横目に、私はため息と共に頭を抱えた。どうしてよりによって、騎士道精神を鍛え直すべき時にこんなにも心がそわそわしてしまう場所に自ら来てしまったんだろうか。目を瞑っても、脳裏に浮かぶのは彼女の顔だ。 ⠀ 初めて会った時の笑顔。私に出会えて嬉しい、私が好きだと雄弁に物語るその気持ちに、誠実な紳士である私は応えないわけにはいかなかった。そして運命的にも偶然すぐに再会した時のはっとおどろいた顔。まんが家にとって商売道具である私の手をまるで宝物のように握って指の骨をなぞられた瞬間に、私は四次元世界の存在を確信した。背中から脳にかけてまるで電流が走ったかのような切ない衝撃、それは単に肉体を刺激する電気信号でなく私の魂へ通じたのだ。肉体という器で切り分けられたこの世界の中で、他者と通じ合うなんて不可能だと思っていた。しかしそれはいままで自分の世界の中で生きてきた私の思い込みだったのである。境目があるからこそ私は存在しているのであり、境目があるからこそふたりは溶け合うことができる。三次元上での交わりを通じてはじめてその器の中にあるはずの魂の形を知ることができるのだと私は知った。 うっとりとクリームを舐めあげた、いちご色の舌から差し出されたそのひとくちのパフェは、スプーンを経由して私の舌に染み込んでいく。これを契りと言わずになんと言うのであろうか。 ⠀ 「……でもこんなに軟弱な私じゃ、彼女を守ることなんて…」 ⠀ 今の私は、鎧さえも失ったボロボロの騎士。こんな状態では彼女に顔向けできない。きらきらに目を焼かれて苦しむ、彼女のような人を癒したいのに。目の前で彼女が泣いているのであれば、手を差し伸べたい。手を握りたい。その肩を抱きしめたい。 ⠀ 「ーー偶然ですね♡」 ⠀ 背後からずっと聞きたかった声がした。顔を上げる間もなく、声の主の手がするりと私の両ほほに触れた。 ⠀ 「び、ビオラ…さん…?」 「正解♡お利口な夜子先生にはご褒美をあげなくっちゃね」 ⠀ そういってほほ笑んだビオラさんは、惚けている私の身体をくるりと自分の方へ向けた。目と鼻の先にビオラさんの顔があって、ピントが合わない。 ⠀ 「えっ、こ、これはちょっと、近……」 「ふたりで溶け合うには……遠いくらいじゃないですか?」 「…ッ!?」 ⠀ 瞳を伏せたビオラさんのまつ毛が、長い。このままでは距離がゼロになってしまう。こんなに彼女から与えられてばかりでいいのか?自分のなけなしのプライドがそう囁いたが、今の私にはもう抗える力は、ない。 覚悟を決めろ、藤都子ーー ⠀ 「お待たせいたしました、いちごのパフェになります」 「ぅえッ!?」 ⠀ バタン! 衝撃音と共に自分のスマホが手から床へすべり落ちたのが見えた。 ⠀ 「おやすみのところ恐れ入ります……。こちら、溶けないうちに召し上がってくださいね」 「は、はい……っ!すみません!」 ⠀ 去っていく店員さんの背中を見つめて、そして自分の背後を振り返る。 誰も、いない。 ⠀ (こ、こんなベタな夢オチなんて……ッ!プロの作家としてどうなんだ藤都子!!!) ⠀ 確かに最近も原稿が忙しかったとはいえ、こんなところで気が付いたら居眠りだなんて。しかもあんな夢………。 ⠀ (こんなんじゃまたまるくんに呆れられちゃうよ…!?) ⠀ アイスに乗ったいちごが、あの日と同じ輝きで私を笑っていた。
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