むずかしさ★★★☆☆
2026年の私的ベスト本は、きっとこの本だ。もしドラえもんが「一冊だけ人に強制的に本を読ませられる」道具をくれたなら、僕は迷わずこの一冊を選ぶ。
少し違う角度から紹介すると、この本は
「人間の『さが』とは何か」
あるいは
「社会はいかに変化するか(少しずつしか変化しないか)」
を克明に記した壮大な「人間観察」の書と言える。
メインテーマは「人々がいかに戦争へと向かっていったか」。
多くの人は戦争を、「軍部に無理やり駆り出された市民たちの悲劇」として記憶している。しかし、この本が教えてくれるとおり、実際には政治家や軍部は最後まで戦争回避の道を探していた。ものすごい勢いで日本を戦争に突き進ませたのは、実は世論だったのだ。
では、なぜ当時の日本人に戦争が魅力的だったのか?その要因を強引にくくるなら、「時代にムカついていた」からだ。
時代は猛烈な速さで変化していく。そのなかで、モダンガールなどと呼ばれる奔放で自由な価値観が出てくる。このままでは、女らしさ、男らしさ、ひいてはこの国らしさそのものが危機に瀕する…。そんな歯痒い思いをしていた人たちが、もっとも強硬に戦争を主張した。
彼らとて、殺し合いを望んだわけではない。ただ、どんどん同一感を失いバラバラに(つまり自由に)なっていく社会への苛立ちが、失われた一体感の希求が、まったく予想もつかない形で戦争を呼び込んだのだ。その「流れ」を大正時代にまで遡り検証する。逆に言えば、昭和だけを見ていてはあの戦争は絶対に理解できない。
『失敗の本質』『昭和16年夏の敗戦』などの研究にまったく見劣りしない名著。100万部売れてほしい。
『人びとの社会戦争──日本はなぜ戦争への道を歩んだのか』益田 肇著(岩波書店)4730円。662ページ。
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勝手に夏の100冊#