【プロデューサー日記】
〜『ちえトラ』にまつわるエトセトラ〜
映画感想編
『スパイダーマン:BND』
前作までピーター・パーカー/スパイダーマンの精神的な支柱であり良心の基準だったメイ叔母さんに代わり、フランク・キャッスル/パニッシャーが保護者的な、人生の指南的役割を果たしていたのが良かったです。
親愛なる隣人スパイダーマンと、どこまでも暴力的で冷酷なパニッシャー。一見正反対の正義感を持つ二人の組み合わせはミスマッチ…と思いきや、「力に溺れて一線を越えるな」という自身の血塗られた過去や復讐心、孤独な生き様を見せることで、ピーターにヒーローであることの責任を問い、恐怖を克服させる反面教師としての存在が強烈でした。
『アベンジャーズ:エンドゲーム』(2019)のクライマックス、インフィニティガントレット争奪戦では、最年少ヒーローのスパイダーマンをサポートすべくなぜか女性ヒーローたちが颯爽と集まってくるシーンに?????????となりましたが、今作ではこの数年間で刷新された(未だ問題点があるのも含めて)ヒーローのあり方を楽しめたし、現代ヒーロー映画ならではの方法でヒューマニティーとヒューマニズムがちゃんと描かれていて良かったです。
原作コミックをオマージュしたオープニングはオタク心をくすぐり、胸が躍りました。
物語を創造するうえで、視聴者にわかりやすく伝える、感情移入しやすくするためには「葛藤→克服→成長」という黄金律をよく用いるわけです。しかし難しいのは、現実の世界では誰しもが「葛藤して克服して成長」できるわけではないということ。あまりに出来過ぎたストーリーは見やすい反面、スマート過ぎる展開にどこか心が離れてしまう瞬間があります。
私が個人的に好きな物語は、主人公が成長を試みて上手くいかなかったり、試練を乗り越えられなかったりするものです。試練に打ち勝つことそのものが罠だったり、成長できていると錯覚していたり、努力が誰かに利用されていたり、というのも好みです。絶望で立ち尽くしたり、悔しさを噛み締めたり、当てもなく彷徨ったり、主人公が未熟なままで終わる方が自然な気がするからです。
成長せずとも生き方に変化が生まれ、その後を予感させる「余白」がある物語の方が、我々に寄り添ってくれるような身近さ、親密さがあるような気がします。だって「成長」することだけが「成長」ではないですもんね。
(宮沢P)
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