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Lord Luther-Hiroshi Ichimura
@luther_ichimura
声楽家・シェイクスピア俳優/発声・発語・滑舌・演技指導者/ボイトレに筋トレを持ち込んだパイオニア 国立音楽大学声楽科卒/欧米にて研鑽を積む 東京二期会会員(市村ヒロシ名義)/国際演劇協会日本センター会員/NPO法人副理事長/『副次的文化系歌曲祭』運営委員会委員長/合唱集団EARTH名誉サポートメンバー/昭和音楽大学講師
가입 September 2010
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身体スペックの足りない人が、通る声を出そうとすると何が起きるのだろうか。 ここで言う身体スペックとは、単純な筋力の強弱ではない。 呼吸機能、胸郭の可動性、姿勢保持能力、声帯閉鎖能力、そしてそれらを協調させる神経筋機能まで含めた総合的な身体能力のことである。 通る声を出すためには、ある程度の呼気圧が必要になる。 しかし、その呼気圧を受け止めるだけの声帯閉鎖能力や身体機能が不足している場合、人は不足分を別の方法で補おうとする。 最も多いのは、息の量を増やすことである。 本人は「もっと声を飛ばそう」と考えているのだが、声帯が十分に呼気圧を受け止められない状態で息だけを増やしても、音声エネルギーへ変換されずに空気が漏れる割合が増える。 その結果、本人は頑張っているにもかかわらず、客席では「息っぽい」「輪郭が甘い」という印象になることも少なくない。 すると身体は、その漏れる息を何とか制御しようとする。 本来であれば呼吸器系と声帯によって行われるべき仕事なのだが、それだけでは支え切れないため、首や顎、舌といった周辺組織まで動員され始めるのである。 その結果、喉頭周囲の自由度が失われる。 顎は無意識のうちに固定され、舌は柔軟性を失い、首の前面には持続的な緊張が生まれる。 本人は声を支えているつもりなのだが、実際には発声に必要な自由度を自ら減らしてしまっているのである。 さらに胸郭の可動性が不足している場合には、呼吸量を確保するために肩周囲の筋群まで過剰に働き始める。 ところが肩や首の緊張は互いに影響し合うため、発声はますます不自由になる。 こうして生まれた声は、一見すると大きい。 しかし、その実態は効率の悪い代償動作の集合である。 必要以上の筋活動によって疲労が蓄積しやすくなるため、公演やレッスンの後半になると声の密度や安定性を維持出来なくなる。 また、発声が身体全体の機能ではなく、その日の体調や精神状態へ依存する割合が増えるため、調子の良い日と悪い日の差も大きくなりやすい。 私は長年発声を見てきたが、「もっと通る声が欲しい」と言う人ほど、声そのものを変えようとする傾向がある。 しかし実際には、問題の多くが身体側に存在していることは珍しくない。 だから私は、通る声を作ろうとする時ほど、声だけを見てはいけないと思っている。 身体が十分に機能した結果として声が通っているのか。 それとも、身体の不足を無理やり補った結果として声を出しているのか。 その違いは、長く歌い、長く演じる人ほど無視出来ないのである。
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