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あたらしいりんちゃん
@newrinchan_ange
広報マーケの会社員、兼作家志望です。小説、エッセイ、心にうつりゆくよしなしごとを綴ります。ちょっと変わった人生を覗きたい人へ。気が向いたら、現実でもどうぞ。
가입 April 2026
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夏は夜。みたままつりの頃なんて、さらなりかも。 あの頃は蛍だったものが、今は提灯になって宵を漂っているようだった。 終盤の頃、妹とその子供とともに祭りを訪れていた。 「ちょっと、話さない?」 ふと、湿り気のある風が、首元を這うように撫でた。 石畳に座る妹の表情は妙に暗がりに隠れていて、祭りの灯りも届かない。 彼女はぽつりぽつりと、話し始めた。 「東京のおばさんが、亡くなったの」 話は聞いていた。 高度経済成長の頃、モーテル経営から身を起こし、土地を買い集め、大きな財産を築いた人だった。 妹の結婚式のときに一度会った。 丁寧な編み目のジャケット、胸元の上質そうなブローチの耀きをなぜかよく覚えている。 「そうだったんだね、子供たちにも良くしてくれたよね。残念だったね」 「遺産をね。どうするか、って話してるみたいで」 自分でも気づかないまま、呆けちゃってたんだって。 遺言書もなかったみたい。 一生かけても到底使いきれないほどの財産を、血縁関係もほとんどない、ほぼ赤の他人が攫っていくことになりそうなの。 「あんなにお金を持ったまま、一人で死んでいったなんて、なんだか悲しすぎて」 彼女はそう言うと、提灯の灯が届かない暗がりへ視線を落とした。 薄闇に溶けていった言葉をたぐり寄せながら、わたしは言う。 「お金が欲しかったわけじゃない。でも、わたしたちのこと、信用できなかったのかなって」 「そんなことは、ないと思うよ。身に余る財産は、ときどき目をくらませてしまうものだから」 「……そうね。もしそうなったら、わたしも捨てられてたかもしれないものね」 雑踏が、急に遠くなった。 祭囃子も、車のクラクションも、どこにも捕らえられないぐらい、遠くなった。 そんなことないよ。 雑踏の遠さに掬い取られた言葉が、暗がりにそのまま漂っていた。 「ママ、見て」 しばしの沈黙のあとだった。 舌足らずの明るい声がした。 無邪気な笑顔とともに、弾んだ靴音が響く。 手持ち提灯を振り回しながら、はしゃいだ様子で息子が寄ってきた。 柔らかな光が、和紙越しに鮮やかな青色になって呼吸をするように揺れている。 光の反射で、大きくて長い影が伸びていた。 それを踏み越えるように、彼はすいすいと人混みの中を動いていく。 にっこりと、彼女が笑う。 「待って、待って」 提灯を揺らしながら、小さな背中は人波へ溶けていった。
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