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正木伸城
@nobushiromasaki
イベントプロデューサー・マーケター・経営者|他、約20の事業に取締役や顧問として参画|常に3冊持ち歩く活字好き|仏教思想研究家|哲学愛好家|『監獄の誕生』が座右書|うつ病→精神病棟→36歳から本格的に社会人デビュー →3社を経て現職|著書は共著あわせて3冊既刊|献本書評も受けつけています|取材・仕事の依頼はDMにて📩
가입 September 2018
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「適者生存」という言葉は、めちゃくちゃ誤解されている。強い者が生き残る。優れた者が勝つ。その結果が「進化」だ。そう信じている人は意外に多い。でも、その理解はほぼ全て間違っている。本書の主役は、進化そのものではなく絶滅のほうだ。ぼくらは進化を「生き残った者の物語」として読みたがる。でも、地球史を眺めて見れば、これまで存在した生物種の、実に99%以上がすでに絶滅している。生き残りは、ごくわずかだ。 進化史の圧倒的な本体は「成功」ではなく「消滅」である。ぼくらはたまたま生き残った側の子孫であるに過ぎない。その生物が「優れていたから」生き延びたのではなく、 ただ「運が良かった」だけということが実際に多い。巨大隕石が地球に落ちて空が塵に覆われたとき、どれだけ環境に適応していようとも、たまたま地中に潜れた者、たまたま小さくて少ない餌で足りた者が生き延びるのである。 ちなみに、ぼくがこの本でいちばん唸ったのは、こうした科学的事実の紹介そのものより、「なぜぼくらは進化をこうも誤解するのか」を問う後半だった。著者は進化論をめぐる俗流の理解、たとえば「進化は進歩だ」「強い者が勝つのが自然の摂理だ」といった思い込みがどこから来るのかを掘り下げる。そこには、古生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドとその論敵たちの有名な論争が召喚される。 グールドは生命の歴史のテープをもう一度巻き戻して再生したら、まったく違う世界になるはずだと論じた。人類が現れたのは必然ではなく、無数の偶然のたまものにすぎない、と。この主張は生命史から「意味」や「必然」を読み取りたがるぼくらの欲望を真正面から否定する。ぼくらは自分たちがここに在ることの理由が欲しい。進化の頂点として選ばれてここにいるのだと思いたい。その願望が、「適者生存」という言葉を都合よくねじ曲げてきた。 タイトルにもある通り、「理不尽な進化」なのである。進化は理にかなってなどいない。強い者が報われ、努力した者が生き残る、そんな道徳的な物語ではまったくない。それはただ、運と偶然に大きく左右される非情なプロセスである。そしてぼくらは、その理不尽さを直視するのがどうしても苦手で、そこに「進歩」や「適者生存」という耳あたりのいい物語を上書きしてしまう。 繰り返しになるが、進化は理不尽である。これは間違いない。ただ、その理不尽さを認めることは、絶望に直結するわけではない。生き残ったことに大した理由なんてないと認めたとき、ぼくらは初めて「優れているから生きていい」という残酷な等式から自由になれる。運で生き延びたにすぎないぼくらは、同じく運で苦境にある誰かに対して少しだけ優しくなれるはずなのだ。 『理不尽な進化 増補新版 遺伝子と運のあいだ』吉川浩満著、ちくま文庫
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