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中井 圭
@nakaikei
映画解説者。「映画の天才」「偶然の学校」代表。「文藝別冊 クリストファー・ノーラン 増補新版」「スティーヴン・スピルバーグ 映画の子」「森田芳光全映画」「観ずに死ねるか」など。各種媒体に映画評寄稿のほか、映画イベント登壇、審査も担当。日本酒、台湾、温泉、鮨、旅が好き。 nakaikei.work@gmail.com
加入 October 2009
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『バックルームズ』(9/4公開)を観た。YouTubeから現れた若き才能、ケイン・パーソンズが若干20歳にして構築したのは、単なる話題のホラーという括りでは捉えきれない、異様なリミナルスペース映画だ。 1990年、家具量販店の地下で発見された異空間に魅せられ、やがて取り込まれていく人々。かつてどこかで見た気がする無人のオフィス、果てなく連なる部屋。だが、その奥へ進むほど画面は、造形の異質さと抽象度を増していく。 独特な遠近感や、この世ならざる物質の輪郭が崩れていくさまは、ときにダリの絵画などを想起させる。それらは単なる恐怖の対象ではなく、現実に行き場を失った登場人物たちの内面を投影する器でもある。よくある外部性の高い怪異の存在が分かりやすく恐ろしいのではなく、自らの内側に抱えた闇との対峙によって蝕まれていくことが本作の恐怖であり混沌だろう。 そして、何もかもが即座に意味づけされる大考察時代に、本作は無限の解釈を誘いながら、安易に回収されない何かとして残り続ける。シュルレアリスム的な視聴覚が生む異物感が、新たな手触りを観客に残す。 同じリミナルスペース映画でも、かの『8番出口』とはまるで違う。『8番出口』が閉じ込められた異空間からの脱出を通じて、人生を見つめ直し再生していく映画だとすれば、『バックルームズ』は人間の内面を異空間に投影し、その内部へと人を溶かしていく映画である。観客を理解の境界に立たせながら、容易な回収を拒む。その容赦のなさが面白い。やばい映画だ。
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