ハラスメント問題の専門家です。
BBC報道によると「男性同僚の脚の体毛を見せられて不快感を覚えた女性もおり、ネット上では『スネハラ』と呼ばれている」とのことですが、「スネハラ」なんて言葉、専門家の私でさえ初耳中の初耳なんですけど。
昨今「ハラスメント」という言葉が都合よく乱用されすぎてる感がありますが、そもそも大前提として、「私が不快に感じた」と「相手がハラスメントをした」はイコールじゃないですからね。少なくとも法的な意味では、職場のセクハラもパワハラも、「相手が不快に感じたら自動的に成立」するようなもんじゃありません。
ちなみに男女雇用機会均等法上のセクハラは、職場における「性的な言動」が原因となって、労働条件上の不利益を受けたり、就業環境が害されたりするものです。
普通に短パンを履いた結果、男性のナチュラルなすね毛が見えた。それだけで一体どんな「性的な言動」があるというんでしょうか。むしろ逆に、
「男のすね毛は不快だから剃ってほしい」
「女性が嫌がるから短パンはやめて」
「毛深い男は気持ち悪い」
などと、男性の身体的特徴を性別と結びつけて論評し、体毛処理や服装変更まで求めるようになれば、今度はその言動自体が男性に対するセクハラとして問題になる余地が出てきますね(これは男女を逆にして、「女の体毛が見えて不快」「女なんだから処理しろ」みたいな言動が問題視されるかどうかと考えれば、その異様さは明らかでしょう)。
私がホントに懸念するのは、こうした「自分が嫌だ」「不快だ」みたいな主観的感情に、何でも「○○ハラ」と名付けて、あたかも相手に責任のある加害行為かのように変換してしまう風潮です。
「ハラスメント」は単なる「私のイヤなもの」の総称じゃないんですよ。パワハラにもセクハラにも、それぞれ法令や指針上の定義と成立要件がありますからね。
もちろん、法律上の定義に該当しなくても不適切な言動はありますが、それと「不快に感じたものを何でもハラスメントと呼ぶこと」とは全くの別問題です。
毎度の警鐘ですが、こんな無制限な拡張を続ければ、本当に深刻なパワハラ、セクハラ、人格侵害まで、「また新しい○○ハラかよ!?」みたいに同列に扱われ、ハラスメントという言葉そのものが形骸化し、本当に救済すべき被害まで軽く扱われてしまいかねないことを深く危惧しています。
さらには、マスコミの報道の仕方も問題ですね。
そもそも実在するかどうかも怪しいごく一部の人の「すね毛を見て不快だった」との反応に「スネハラ」なるキャッチーな名称を付け、海外メディアが日本社会の現象として紹介すれば、あたかも日本の職場で「男性社員がすね毛を見せつける新たなハラスメント」が広がっているかのような印象を与えかねませんからね。要らぬ誤解や分断を煽るのは止めて頂きたいものです。
すね毛より先に、この際限なく伸び続ける「ハラスメント概念」のほうを手入れしたほうがいいんじゃないですかね。
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BBCニュース - 東京都、猛暑で男性のハーフパンツ勤務を推奨 女性からは「スネハラ」との声も