「人間の意識は、脳内で起きる量子現象から生まれているのではないか」
長年、異端視されてきた「量子意識理論」を支持する、興味深い実験結果が報告されています。
米ウェルズリー大学の研究チームが注目したのは、神経細胞の内部にある「微小管」です。微小管は、細胞の形を保ち、物質を運ぶレールのような極細の構造です。
しかし量子意識理論では、それだけではなく、微小管の内部で生じる量子的な振動や情報処理が、意識に関係すると考えます。
この考え方は、物理学者ロジャー・ペンローズ氏と、麻酔科医スチュアート・ハメロフ氏が提唱した「Orch OR理論」として知られています。
通常の脳科学では、意識は主に、ニューロン同士の電気信号や化学物質のやり取りから生じると説明されます。
一方、量子意識理論は、その電気信号よりもさらに深い階層、つまり神経細胞内部の微小管で起きる量子過程が、意識の土台になっている可能性を主張します。
研究チームはラットに、微小管へ結合して構造を安定化させる「エポチロンB」という薬剤を投与しました。その後、イソフルランという吸入麻酔薬を使用しました。
すると、薬剤を投与されたラットは、投与されていないラットよりも、姿勢を立て直す反応を失うまでの時間が長くなりました。
簡単に言えば、微小管を安定化させると、麻酔で意識を失うまでに時間がかかったのです。
この結果は、麻酔薬が微小管に作用して意識を失わせるという仮説と一致します。そして、微小管を意識の基盤と考える量子意識理論にも、追い風となります。
ただし、ここは重要です。
今回の研究だけで、「意識は量子現象だ」と証明されたわけではありません。
確認されたのは、微小管を安定化する薬剤が、ラットの麻酔への反応を変えたことです。微小管が通常の生物学的な仕組みを通じて、神経活動へ影響した可能性も残ります。
また、意識そのものを直接測定したのではありません。姿勢を元に戻せなくなる「正向反射の消失」を、意識消失の目安として用いています。
人間でも同じことが起きるのかは、今後の検証が必要です。
それでも、この研究の価値は大きいといえます。
意識を単なる哲学的議論ではなく、麻酔薬、微小管、行動反応という測定可能な方法で検証し始めたからです。
研究責任者は、心が量子現象だと受け入れられれば、私たちが何者なのかを理解する新しい時代に入るだろうと述べています。
意識は、ニューロンの電気信号だけで生まれるのか。
それとも、その奥に量子世界の働きが隠れているのか。
答えは、まだ出ていません。
しかし、かつて荒唐無稽とされた仮説が、実験で確かめられる科学の問いへ変わり始めています。
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