ちいかわのナガノ先生のことをわたしは令和のさくらももこ先生だと思っていて、女性作家で、日常のなんでもない場面、けれどそれをまだ誰も切り取って表現していなかったこと(例えばだし割りとか)を見つけて取り出して誰にでも「ああ、こういうことあるある」「食べ物のここの部分おいしい」と感じさせるようなエッセイコミックを描くことができ、さらに「手書き文字」が特徴的で、それがフォントに置き換えられた途端に魅力が少し損なわれてしまい、絵柄はかわいらしくて等身が低く、しかしキャラクターには性別役割分担を逸脱した部分があり(ちびまる子ちゃんは第二次性徴期以前の子どもであるが、女の子らしさにとらわれておらず、下品なことも口にするし、女であることを面倒だと思っているし、ちいかわはそもそも多くの登場人物のジェンダーがわからないようにしてある)しかしシニカルでダークな要素こそが作家の本質で、さらに、多面的にメディア展開、商品展開され(アニメはもちろん、勉強用のドリルやふりかけにまでなっている)、そのときどきに媒体やアイテムにあわせてイラストを描き下ろして細部を描き込み(ちびまる子ちゃんの表紙絵や商品パッケージの模様的な描き込みは時としてすさまじいものがあった。絵本作家のエロール・カインの影響を受けていたという。もちろんアニメの派生物はアニメのデザイナーが手がけている可能性もあるが)、そして歌の歌詞を書くことができ(ちびまる子ちゃんの主題歌は『おどるポンポコリン』以外もほとんどをさくらももこ先生が歌詞を書き下ろしている)、長編映画の原作がつくれる(ちびまる子ちゃんには『大野くんと杉山くん』の出てくるフルで書き下ろした豪華な装丁の大判漫画があり、映画となった)。ルッキズムへのとらわれを描く書き込みもよい。
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