不同意性交等罪、内心の同意だったかどうかは犯罪を構成する主要な要件ではなく、不同意を表明するか、同意意思を表明することが困難な状況であると認定されることで犯罪が構成される。つまり単に内心が不同意であったとしても意思表明が困難とは言い難いならば犯罪は構成しない…が、
この「同意意思を表明することが困難な状況かどうか」というのが曲者で、条文を読むと「確かにそれは困難だろうな」というものから「それは困難な状況とは必ずしも言えないケースがかなりあるのでは?」と思うものも含まれている。 具体的に条文を引用すると
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
この中で、1,2,4,5,6,7はそりゃ犯罪だよねという感じだが、3,8についてはグレーゾーンが広い。
3は飲酒量に応じて判断力がどの程度低下するかは人に拠るし、その時々の体調によっても異なる。応答が比較的しっかりしていて同意可能なように見えても、本人は記憶がなくなっているということもしばしばある。
つまり同意困難な状況であったかどうかをあとから証明するのが難しい。となると、安全策は酒を飲まないということになる。しかし、一般的な男女の性行為における同意形成過程で酒を飲むというのはよくあることであり、これが否定される影響は小さくないだろう。
今回、ジャングルポケットの斎藤が訴えられている裁判で問題になっているのは8で、斎藤被告がベテランであり著名人だったのに対し、被害者が若く無名の新人(会社員でインフルエンサー)であったために被害者側が不同意を表明することが困難だったと検察はしているわけだが、この二人は直接的な先輩後輩ではないし、斎藤被告に番組に誰が参加するかの人事権があったわけではないし、斎藤被告がなんらかの示唆(仕事が取れなくなるぞ、など)をしたわけでもないように見える。が、検察はこの二者の地位の差により意思表明が困難だったとして立件している。
このような関係性で同意が困難だったと認定される場合、わずかながらでも男性側が優越的である場合は全部不同意性交等罪が成立するリスクをはらむことになる。
こうなると、学校の先輩後輩は言わずもがな、職場恋愛やサークル内の恋愛などもリスク要因になるし、夫婦間でも稼いでいるのが夫で妻は夫に対して経済的に従属しているならリスクになりうる。
教師や生徒、体育会系のような強い規律の部活での先輩後輩、職場の上司部下のような支配的関係に適用されるならともかく、単にその業界におけるベテランの著名人と無名の新人というだけで適用してよいとはちょっと思えないんだよな。仮に適用されるんであれば男女間の関係性の相当の範囲が含まれてしまうから社会的な影響はかなり大きい。
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