JALCOエネルギーコラム⑪
JC-STARとは何か?
~系統用蓄電池に求められる新しいサイバーセキュリティ基準~
前回のコラムでは、現在世界の系統用蓄電池で主流となっているLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)についてご紹介しました。
現在の系統用蓄電池(BESS)は、単に電気を蓄える設備ではありません。
PCS(パワーコンディショナー)、EMS(エネルギーマネジメントシステム)、通信装置などがインターネットを通じて接続され、遠隔監視や自動制御を行いながら運転されています。
そのため近年では、設備の性能や価格だけではなく、
「サイバーセキュリティ」
も非常に重要な要素となっています。
そこで日本政府が導入した制度が
JC-STAR
です。
今回は、このJC-STARとはどのような制度なのかを分かりやすく解説します。
① JC-STARとは?
JC-STARとは、
Japan Cyber-Security Technical Assessment Requirements
の略称で、日本政府が2025年から開始した
IoT機器向けサイバーセキュリティ認証制度
です。
インターネットへ接続される機器について、
「適切なサイバーセキュリティ対策が実施されているか」
を確認する制度です。
制度は経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が中心となって運営されています。
② なぜ必要なのか?
現在の系統用蓄電池は、
・PCS
・EMS
・通信装置
・遠隔監視システム
などがネットワークで接続されています。
もし第三者がこれらの機器へ不正侵入すると、
・設備の停止
・不正な充放電
・電力系統への影響
・社会インフラへのサイバー攻撃
などにつながる可能性があります。
そのため、日本政府は重要インフラにつながる設備について、一定以上のサイバーセキュリティを確保する制度を整備しました。
③ 2027年度から何が変わるの?
経済産業省は、送配電網へ新たに接続する設備について、JC-STARの取得を段階的に求める方針を示しています。
現在予定されている適用時期は次のとおりです。
特別高圧・高圧設備
2027年4月以降
新たに系統アクセス契約を申し込む案件について、対象機器にJC-STAR★1以上が求められる予定です。
低圧設備(50kW未満)
2027年10月以降
流通在庫などへの配慮から約6か月の経過措置が設けられ、その後、新たに系統アクセス契約を申し込む案件が対象となる予定です。
ここで重要なのは、
「2027年4月に運転開始する設備」ではなく、「一定時期以降に新たに系統アクセス契約を申し込む案件」が対象になる
という点です。
つまり、制度開始前に適切に契約・手続きを行っている案件については、制度上の取扱いが異なります。
この違いは誤解されやすいため、理解しておきたいポイントです。
④ 何を審査する制度なの?
JC-STARは、
蓄電池の性能を評価する制度ではありません。
審査されるのは、
サイバーセキュリティ対策
です。
例えば、
・初期パスワードの適切な管理
・脆弱なパスワードを使用しないこと
・ソフトウェアを安全に更新できること
・脆弱性への対応体制
・通信の暗号化
・不正アクセスへの対策
などが確認されます。
つまり、
「ハッキングされにくい仕組みになっているか」
を確認する制度です。
⑤ 世界でも同じ流れ
このような制度は日本だけではありません。
欧州では
EUサイバーレジリエンス法(CRA)
米国では
Cyber Trust Mark
など、IoT機器のサイバーセキュリティ制度が整備されています。
電力インフラは国の重要インフラであり、世界的にもサイバーセキュリティ強化が進んでいます。
JC-STARも、その流れの中で導入された制度といえます。
⑥ なぜ話題になっているの?
現在、世界の蓄電池市場では中国メーカーが大きなシェアを占めています。
一方で、JC-STARでは製品だけでなく、申請企業のサイバーセキュリティ体制なども審査対象となるため、一部の中国メーカーの認証取得状況が注目されています。
日本経済新聞などでも、経済安全保障の観点から取り上げられており、業界内でも大きな関心を集めています。
ただし、JC-STARは
「中国製だから取得できない」
という制度ではありません。
また、
「製品性能」や「蓄電池セルの品質」を評価する制度でもありません。
あくまでも、
サイバーセキュリティ対策を評価する制度
であることを理解することが重要です。
⑦ 今後のポイント
これからの系統用蓄電池では、
・性能
・安全性
・価格
・寿命
だけではなく、
サイバーセキュリティ
も重要な選定基準となります。
JC-STARは、今後の日本のエネルギーインフラを支える重要な制度の一つとして位置付けられています。
制度を正しく理解することは、今後の系統用蓄電池市場を理解する上でも重要になるでしょう。
次回予告(第12回)
「JALCOホールディングスのJC-STARへの対応と今後の方針」
次回は、
既に契約済み案件への影響
今後契約する案件への対応
Gotion・TAOKEなどパートナー企業との取り組み
JALCOの調達方針
について、JALCOの考え方を分かりやすく解説します。
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