父が亡くなって十日後、見知らぬ会社名で980円が引き落とされていた。
母が通帳を持ってきて「これ何だろう」と言ったとき、私にも心当たりがなかった。
父のスマートフォンはすでに解約していたが、連携していたサブスクはそのまま生きていた。
契約者本人が死んでいても、カードが有効なら課金は止まらない。
問い合わせ窓口を探して電話すると「契約者ご本人からのご連絡が必要です」と録音音声が流れた。
本人はもういないのに。
死亡診断書をFAXしろと言われた会社、戸籍謄本の原本を郵送しろと言った会社、そもそも電話窓口が存在しない会社もあった。
一つ解約するごとに平均で四十分かかった。
父が入れていたサービスは全部で六つ。
母は「お父さんが悪いわけじゃないのに」と途中で口をつぐんだ。
悼む時間を、手続きが削っていく。
死亡届を自治体が受理した瞬間に、紐づいたサブスクが自動で止まる仕組みは技術的には可能なはずだ。
本人確認番号と死亡情報を行政がすでに持っているのだから。
判断基準として覚えておいてほしいのは、カード番号と連携しているサービスは、カード解約だけでは止まらない場合があるということ。
契約者名義で登録されているアプリを生前にリスト化しておくことが、遺族の時間を守る最短の手段になる。
母は最後の一つを止めたとき「これでやっと全部ね」と言った。
父が亡くなって二か月と三日が経っていた。
980円の引き落としは、その間も毎月来ていた。
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