新幹線に乗ったら、私の指定席で知らない女性がお弁当を広げていた。
金曜の夕方、出張帰りの列車だった。二週間前に窓側の席を予約していて、切符には「七号車・八番A席」とある。
「すみません、そこ私の席なんですが」
女性は顔も上げず、「ああ、隣の通路側に座って」と言った。
隣のB席には、女性の友人らしい人が座っている。女性は私の席に座って、二人でお弁当を食べ始めていた。
「私は窓側を予約しているので、席を替わっていただけますか」
「私たち久しぶりに会えたの。あなた一人なんだから、どこでも同じでしょ」
女性が差し出した切符を見ると、十三番C席。五列も後ろの通路側だった。
「その席に戻ってください」
「そっちまで歩くの面倒なのよ。それにもう荷物を上に置いちゃったし」
B席の友人は気まずそうに「私、一人で食べるから」と言った。でも女性は「遠慮しないで」と取り合わない。
通路には後ろから人が来ていた。私は荷物を持ったまま、席の前で立ち続けた。
「車掌さんを呼びますね」と言うと、女性はやっと顔を上げた。
「え、わざわざ? たった五列のことで?」
「自分の予約した席に座りたいだけです」
すると女性は、お弁当のふたを閉めながら言った。
「じゃあ、あなたが十三番に座ってよ。私が食べ終わるまで立たせるつもり?」
顯示更多