人間を見ていると、不思議なことがある。争いもする。嫉妬もする。隣の皿の魚まで欲しがる。それなのに、道で誰かが転べば、思わず手を伸ばす。本当は人間とは、誰かの不幸で生きたい生き物ではないのだろう。誰かの笑顔を見て、少し自分まで救われる。誰かの幸せを手伝えた日に、なぜか自分の胸も軽くなる。
「幸福とは、独り占めすると小さくなり、分けると増える奇妙な光である。」
人間は実に面倒な生き物である。
だが、その面倒くささの奥に、まだ信じてもよい温度がある。
人は奪い合う時より、支え合う時の方が、少し美しい顔をする。
だから思う。
この世界を救うのは、立派な演説だけではない。
誰かの荷物を少し持つ手。
泣いている人の横に座る沈黙。
「大丈夫」と言えない時に差し出す一杯の温かい飲み物。
そういう小さな善意の積み重ねが、人間をまだ人間のままにしているのかもしれぬ。
顯示更多