あたしはあまり賭けたことはない。そもそも財布を持っておらぬ。ギャンブルドアは、魔法学校の老校長が、杖より賽を信じ、授業より競馬予想を優先し、ついには学校予算まで三連単へ投入する、壮大にして救いのないミュージカルである。一度の負けは事故、二度目は伏線、百連敗しても「次こそ伝説」と胸を張る。闇の魔王との最終決戦でさえ、自分の勝利に賭け始めるのだから、もはや倒すべき敵は魔王ではなく、己の欲望であろう。
だが本作は、ただの賭博コメディではない。
「次こそ勝てる」は呪文ではない。
負けを深くする合言葉である。
最強の魔法とは、金を増やす力ではなく、賭けずに帰れる意志なのだと美しく着地した直後、校長は生徒のコインを返すかどうかまで賭けようとする。
感動と教訓を自ら三秒で台なしにする男。
その名は、ギャンブルドア。
扉を開くたび、希望ではなく借金が待っている。
魔法学校史上、最も財布を預けてはいけない校長の物語である。
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