今回の皇室典範改正を見て、あたしが最も恐れているのは、男系が途絶えることでも、女性天皇が誕生することでもない。天皇という存在が、政党同士の勝敗によって形を変える制度になってしまうことである。天皇は、選挙で選ばれない。政策を語らない。賛成票も反対票も投じない。それでも国民統合の象徴でいられるのは、特定の政党や思想に所有されていないからだ。保守の天皇でもなく、リベラルの天皇でもない。
与党を支持する人にも、野党を支持する人にも、政治に関心のない人にも、等しく遠く、等しく近い。
その誰のものでもないという距離こそ、象徴天皇制を支えてきた静かな柱だった。
ところが今回の改正案では、立法府の総意という言葉が繰り返されながら、実際には女性天皇を求める会派も、旧宮家養子案に反対する会派も存在する。
異論があること自体は健全である。
問題は、異論が残ったまま多数決で可決したものを、総意と呼んでしまうことだ。
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