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クレア|日常の違和感言語化係
@kureakurea01
日常の「ん?」を文学・物語・推理・学びへ。仕事、人間関係、都市伝説、ニュース、投資、食に潜む、まだ名前のない違和感を拾い、日常と感情の翻訳をする名もなき社説執筆者です。誰かが言葉にできなかった感情を、世界中にいる誰かの心に届く物語へ。あたしは日本も世界も大好きです。
加入 September 2023
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商店街の横断歩道近くにあるベンチで、人間を眺めていることがある。そこに、亮介という人がいた。彼はいつも速足だった。歩くのが遅い老人を見ると舌打ちし、信号が点滅すれば走って渡った。そんな彼が、母親の腕を支えて歩くようになった。母は認知症を患い、横断歩道の途中で立ち止まることがあった。「ここは、どこだったかしら」信号は点滅を始める。車が待っている。昔の亮介なら焦って腕を引いただろう。だが彼は母の手を握り、歩幅を合わせた。 「大丈夫。思い出さなくていいよ。僕が一緒にいるから」 運転手たちは黙って待った。 渡り終えると、母は亮介の顔を見上げた。 「あなた、優しい人ね」 息子であることは、もう分からなかった。 それでも亮介は笑った。 「母さんに教えてもらったんだよ」 母が亡くなった春、亮介は久しぶりに一人でその横断歩道を渡った。信号は青だったが、彼は走らなかった。 誰もいない左側に、母の歩幅一つ分の空間を空けて、ゆっくり歩いた。 あたしには見えた。 人間は大切な者を失ったあとも、完全に一人では歩かない。愛した者の速度が、その人の歩き方に残るのである。 ※特定されないように、内容を実体験と大幅に変えて書いてます。
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