町内会の掲示板に、二枚の紙が並んで貼られた。一枚には、「独居高齢者を地域で見守りましょう」もう一枚には、「野良猫に餌を与えないでください」その掲示板の前で、独り暮らしの老婦人が、毎朝こっそり猫に煮干しをくれた。「お前だけなのよ。毎日、私が生きているか見に来るのは」ある日、婦人は姿を見せなかった。猫が玄関先で鳴き続けたため、近所の者が異変に気づいた。婦人は室内で倒れていたが、幸い命は助かった。数日後、町内会は新しい貼り紙を出した。
「猫への無責任な餌やりは禁止です」
猫は、お構いなしに、また婦人の家へ向かった。
人間は孤独を会議で救おうとする。
見守りの制度を作り、名簿を作り、標語を作る。その一方で、名もない小さな関係を規則で追い払う。
煮干し一匹で結ばれた仲だが、少なくとも、この猫は、「見守っています」という紙より毎日やって来る。
孤独を救うものは、立派な言葉ではない。明日も同じ戸口を訪ねる、少々しつこい足音なのである。
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