【恐怖が支配しているグラウンドは「減点方式」になる】
ミスをしたら怒られる。
判断を間違えたら外される。
消極的なプレーよりも、失敗したプレーの方が強く責められる。
こうした環境が続くグラウンドでは、選手の頭の中にある評価基準が少しずつ「加点方式」から「減点方式」に変わっていきます。
本来、スポーツでは「どうすればアウトを取れるか」「どうすれば次の塁を狙えるか」と考えてプレーします。
ところが恐怖が強くなると、目的が「成功すること」ではなく「失敗しないこと」に変わります。
心理学では、人間は利益を得る喜びより、損失を避けようとする反応の方が強くなりやすいことが知られています。
いわゆる損失回避です。
さらに「ミス=怒られる」「ミス=試合から外される」という経験が重なると、脳はプレーそのものだけではなく、ミスの先にある結果まで予測するようになります。
すると守備では「捕る」より「落としたらどうしよう」、送球では「投げる」より「暴投したらどうしよう」という情報が頭の中に入り込みます。
ここで問題になるのが注意資源です。
人間が一度に処理できる情報量には限界があります。
失敗後の評価や監督の反応まで考えながらプレーすれば、本来は打球速度や走者、距離などに向けるはずだった注意が奪われます。
さらに、普段は自動化されている動作まで意識的に確認し始めます。
「ちゃんと捕ろう」「丁寧に投げよう」と身体操作へ注意を向けすぎることで、自動化された運動が崩れる現象は、チョーキング研究で扱われるreinvestmentという考え方にも近いものです。
だから恐怖が強いチームほど、一見すると「慎重」に見えて、実際には判断が遅くなることがあります。
一歩目が遅れる。
次の塁を狙えない。
難しいプレーを避ける。
これは技術不足だけではありません。
選手が「何点取れるか」ではなく、「何点減らされないか」でプレーしている可能性があります。
もちろん、ミスを何でも褒めればいいわけではありません。
大切なのは評価する場所です。
「エラーしたからマイナス」ではなく、「その判断は正しかった」「チャレンジした結果のミスなのか」「準備に問題があったのか」と、結果とプロセスを分けて見る必要があります。
強いチームを作るなら、選手にノーミスを要求するのではなく、成功につながる判断を増やしていく。
グラウンドが「失敗したら減点される場所」になると、選手は挑戦しなくなります。
逆に「良い判断を積み上げる場所」になれば、多少のミスが起きてもプレーは小さくなりません。
選手の積極性を消しているのは、技術ではなく、そのグラウンドに存在する評価の仕組みかもしれません。
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