『道徳を競う帝国 マイノリティの権利はどこからきたのか』(
黒人、女性、外国人などの権利が、いかに拡大してきたのかを追った政治史。とても良かった。
一般には、マイノリティの権利といえば、「西洋社会が自由や平等の理念を育てた!」や「人類が差別を反省しながら少しずつ実現してきたのだ!」みたいに言われるわけです。
ところが本書では、「実際の歴史はそこまで美しくない」と指摘。人権が広がった背景には、帝国同士が「どちらがより道徳的な国家か」を競い、ライバル国の差別を外交上の弱点として攻撃し合ったのが大きいんだそうな。
たとえば、
日露戦争で日本がロシアに勝つ→
白人国家は絶対に倒せないというイメージが崩れる→
世界各地の反植民地運動が刺激される→
世界中で、欧米の非道徳性を批判する声が高まる→
欧米列強に対抗するために人種差別を批判し、自国の道徳的な優位性をアピールするムーブが生まれる。
みたいな流れっすね。「人権は善意から生まれた」って物語を崩して、「偽善だろうが国益だろうが、競争の仕組みしだいでは社会が前進するかも」と示すところが本書の面白さであります。
最終的に著者は、今後の日本でマイノリティの権利が広がるとしても、それは日本人の道徳性が突然高まるからではなく、多様性の尊重が国益と結びついたときだろう、と指摘していて割と納得。
身も蓋もない話ですが、善意に期待するよりも、「差別しないほうが得になる仕組み」を作ったほうが良さそうですもんねぇ。
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