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アメリカの歴史学者・アンドリュー・ハートマンの大著を、先輩で友人でもある森原公敏さん(国際問題研究者)が7か月かけて翻訳したのが『マルクス・イン・アメリカ』(新日本出版社/原題『Karl Marx in America』)です。 本著は、600ページを超え値段も高く、買おうかどうか迷いましたが、呑み代を節約するつもりで思いきって購入しました。読み始めたらとても面白く、大門酒蔵を呑みながら三晩で読み終えました。 なぜ反共の国アメリカでいまマルクスがブームになっているのか。なぜ民主的社会主義者(DSA)が発展し、ニューヨーク市長にマムダニさんが当選したのか。そこには、南北戦争中のリンカーン大統領の再選にマルクスが祝辞を送って以来、受け継がれてきた民主的水脈があること。格差が急拡大する現在のアメリカで資本主義の搾取のしくみを発見したマルクスの理論が多くの人々の社会変革の羅針盤になっていること。何より若者たちが自由に自主的にマルクスに接近し学んでいることがよくわかりました。日本の運動を考えるうえでも示唆に富んだお値段以上の本だと思いました。 ちなみにマルクスはお酒が大好きで、貧乏でも本代と呑み代の節約はできなかったそうです。
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きのうは北九州市で経済の話をしました。  小倉駅に着くと、いつも思いだすのが、小倉を舞台にした映画『無法松の一生』とその脚本を書いた伊丹万作さんのことです。伊丹さんは『戦争責任者の問題』という現代にもつうじるメッセージも書き残しておられます。  荒くれ者の人力車夫「無法松」こと松五郎は、軍人の夫を亡くした吉岡夫人とその息子のことを長年にわたり献身的に世話をしました。  歳をとった松五郎は、あるとき、ずっと抑えてきた夫人への想いを告白しようとしますが、いつもと変わらぬ清楚な夫人の姿に、恋情を抱いた自分を恥じ、「奥さんすまん、わしの心はきたない」と言って飛び出し、二度と夫人と会わず、酒に溺れて死んでいきます。    この映画の初演は太平洋戦争が激化する昭和18年。戦意高揚を図るべき時勢に、亡くなった軍人の妻に車夫が恋をする話など許されぬと情報局から厳しい検閲をうけ、いくつかのシーンがカットされます。  脚本を書いた伊丹さんはあえて軍国主義の風潮に抗して、国家のためでなく人のために尽くす松五郎、軍人の妻に恋をしてしまう人間的な松五郎を描きたかったのではないでしょうか。その後も伊丹さんの脚本は情報局の事前審査で大幅に修正させられたり、却下されたりしています。  当時の情報局は、戦争に向けた世論形成、プロパガンダと思想取締の強化を目的につくられた内閣直属の情報機関で、敗戦後の1945年末に廃止されました。  約80年後の先月、国民監視のための国家情報局設置法案が国会で賛成多数(共産、立憲民主、れいわ、社民などは反対)で可決されました。まさに「新しい戦前」に向かっている気がしてなりません。  伊丹さんは敗戦の翌年、『戦争責任者の問題』を発表し、戦犯だけに戦争責任を押し付け自分たちはだまされていたで済まそうとする国民世論に疑問を投げかけています。 「『だまされていた』という一語の持つ便利な効果におぼれて、一切の責任から解放された気でいる多くの人々の安易きわまる態度を見るとき、私は日本国民の将来に対して暗澹たる不安を感ぜざるを得ない」 「『だまされていた』といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。----二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない」 「この意味から戦犯者の追求ということもむろん重要ではあるが、それ以上に現在の日本に必要なことは、まず国民全体がだまされたということの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めることである」 「新しい戦前」にしないために、いま必要なことを私たちに問いかけていると思います。
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