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八十八夜絵本物語#
⚠️物語はフィクションです。
八十八夜絵本物語 ―
廃道サーキットへの道【前編】
新しい市道から一本、脇へ入る。
そこから先は、六甲山麓を縫うように続く古い市道。
一度、廃道となった区間。
センターラインはない。
道幅も狭い。
ガードレールには錆が浮き、
路肩には秋の落ち葉が積もっている。
それでも――
道は死んでいなかった。
傷んだ舗装は直され、
危険な場所には新しいカーブミラーも付いている。
何もかも新しくするのではない。
使えるものは直して使う。
浮いた予算は、この先にある、
《廃道サーキット》の整備へ回されているという。
フェンリル🐺
「旧式の道路を、維持しているのか。」
路地猫😸
「走れるならな。」
「全部新品にする必要はねぇよ。」
二台のカブは、
ゆっくり山を縫うように走る。
だが――
広い二車線のワインディングとは違う。
急なカーブ。
見通しの悪いブラインド。
山側には落ち葉と苔。
谷側には古いガードレール。
カーブミラーがあっても、
それだけを頼りにはできない。
路地猫は少し後ろから、
フェンリルの走りを見ていた。
路地猫😸
「次の右コーナー、右へ寄せるなよ。」
フェンリル🐺
「了解。」
路地猫😸
「見通しが利かない。対向車に注意しろ。」
「ミラーだけじゃなく、
自分の目でも先を見ろ。」
フェンリルが少し速度を落とす。
路地猫😸
「あと山側の落ち葉と苔。」
「踏む場所を考えろよ。」
フェンリル🐺
「了解した。」
速く走るための道ではない。
けれど――
こういう道だから覚えられることもある。
道幅を見る。
路面を見る。
対向車を考える。
次のカーブの向こうを想像する。
教習所では一本ずつ覚えたことを、
今度は全部、自分で組み合わせる。
路地猫😸
「まあ、腕慣らしにはちょうどいい。」
フェンリル🐺
「腕慣らし……。」
路地猫😸
「ただし。」
「ここはサーキットじゃねぇぞ。」
フェンリルは前を見た。
その先に、小さな看板が立っている。
《廃道サーキット 5km →》
フェンリル🐺
「目的地まで、あと5キロ。」
路地猫😸
「おう。」
「まずは、そこまでちゃんと走って行こうぜ。」
二台のカブは、落ち葉の舞う旧市道を、さらに奥へ進んでいく。
――後編へ続く。