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フェンリル編 第34話
「狼のいる日常 ― 次を見る」 🐺🏍️
⚠️物語はフィクションです。
■ 八十八夜自動車学校
第一段階。
技能教習は続く。
一本橋。
スラローム。
フェンリルの操作は、
少しずつ滑らかになった。
■ 教官
「では。」
「次の交差点を右折します。」
「後方確認し、右へ寄ってください。」
■ フェンリル🐺
「了解した。」
ウインカー。
進路変更。
■ 教官
「フェンリルさん。」
「一度止まりましょう。」
■ フェンリル🐺
「?」
停止。
■ 教官
「後方確認は?」
■ フェンリル🐺
「した。」
■ 教官
「いつです?」
■ フェンリル🐺
「常時。」
■ 教官
「…………常時?」
■ フェンリル🐺
「後方教習車。」
「距離31.7メートル。」
「相対速度――」
■ 教官
「分かりました(笑)」
「でも、目で確認してください。」
■ フェンリル🐺
「既に、存在を認識している。」
「再確認する必要性がない。」
教官は。
少し考えた。
■ 教官
「確かに、フェンリルさんには。」
「見えているんでしょう。」
「でも、後ろを走っている人には。」
「あなたが見えている事が分かりません。」
■ フェンリル🐺
「…………。」
■ 教官
「道路では、自分が安全だと。」
「分かっているだけでは。」
「足りないことがあります。」
もう一度スタートする。
ミラー。
ウインカー。
フェンリルが。
実際に首を動かす。
後方確認。
そして。
進路変更。
■ 教官
「はい。」
「それでいいです。」
■ フェンリル🐺
「後方状況は先ほどと同一だった。」
■ 教官
「でしょうね(笑)」
■ フェンリル🐺
「ならば。」
「確認行動そのものに意味がある?」
■ 教官
「あります。」
休憩時間。
フェンリルは。
路地猫に聞いた。
■ フェンリル🐺
「既知の情報を、再取得する意味が。」
「まだ理解できない。」
■ 路地猫😸
「情報を取るためだけじゃ。」
「ねぇんだよ。」
■ フェンリル🐺
「?」
■ 路地猫😸
「後ろ見てウインカー出して。」
「ゆっくり寄る。」
「そうすりゃ。」
「周りの奴にも。」
『こいつは右へ行くんだな』
「って分かる。」
■ フェンリル🐺
「相手のため?」
■ 路地猫😸
「自分のためでもある。」
「道路ってのは。」
「みんなで使ってんだからな。」
その時。
隣のベンチから。
声がした。
■ 教習生
「あの。」
「昨日のスラローム上手かったですね。」
■ フェンリル🐺
「俺か?」
■ 教習生
「はい(笑)」
■ フェンリル🐺
「最初は10.8秒だった。」
■ 教習生
「俺なんか、昨日。」
「パイロン倒しましたよ(笑)」
■ フェンリル🐺
「なぜ笑う?」
■ 教習生
「え?」
■ フェンリル🐺
「失敗した。」
「なぜ、笑える?」
教習生は。
少し考える。
■ 教習生
「だって、今日は倒さなかった。」😊
■ フェンリル🐺
「?」
■ 教習生
「昨日できなかったことが。」
「今日できると。」
「結構、楽しいじゃないですか。」😊
フェンリルが。
止まった。
■ フェンリル🐺
「楽しい……。」
昨日、路地猫から聞いた言葉だった。
■ フェンリル🐺
「なぜ、二輪免許を取る?」
■ 教習生
「え?」
■ フェンリル🐺
「移動だけなら、自動車の方が。」
「利便性が高い。」
■ 教習生
「まあ、雨にも濡れますしね(笑)」
「でも……」
少し笑った。
■ 教習生
「乗ってみたかったから。」
■ フェンリル🐺
「それだけ?」
■ 教習生
「それだけです(笑)」
フェンリルは。
しばらく。
何も言わなかった。
■ 教習生
「フェンリルさんは?」
「免許取ったら。」
「どこへ行くんです?」
■ フェンリル🐺
「剣山スーパー林道。」
■ 教習生
「…………。」
「いきなり!?」😳
■ 路地猫😸
「行かせねぇよ。」
「まず、近場からだ。」
教習終了。
■ 教習生
「じゃあ。」
「また。」✋
フェンリルは。
その手を見る。
戦術的意味。
なし。
安全上の必要性。
なし。
それでも少し遅れて。
🐺✋
■ 路地猫😸
「今の。」
「必要だったか?」
■ フェンリル🐺
「必要ない。」
■ 路地猫😸
「なんで返した?」
■ フェンリル🐺
「…………。」
「分からない。」
少し考える。
■ フェンリル🐺
「だが、悪くなかった。」
■ 路地猫😸
「そうか。」(笑)
戦場では、
見えていれば、それでよかった。
敵を索敵し。
識別し。
排除する。
だが、
人間の道では。
見えるだけでは足りないらしい。
自分が見ていることを相手にも伝える。
そして時には、
必要のない挨拶まで交わす。
フェンリルには、
まだ、分からないことが多い。
だから、もう少し走ってみよう。
つづく 🐺🏍️
次回
フェンリル編 第35話
「狼のいる日常 ― 免許」
一本橋。
スラローム。
安全確認。
少しずつ。
覚えてきた。
次に待っているのは――
卒業検定。