今までも何度も指摘してきたが、いま起きている円安は、単なる為替変動ではない。
私たちが目撃しているのは、過去20〜30年にわたって世界経済を支えてきた「安い円」という大前提が揺らぎ始めた、数十年に一度の構造転換かもしれない。
長年、超低金利の円は、世界で最も安く借りられる通貨だった。投資家は円を借り、ドル資産、米国株、ハイテク株、AI関連株、新興国資産などへ資金を回してきた。いわゆる円キャリートレードである。
安い円が世界のリスク資産を下支えしてきた。
その「無料の昼食」は、いま終わりに近づいているかもしれない。
日銀が金利を上げれば、円の調達コストは上がる。円が急反発すれば、積み上がったキャリートレードは巻き戻される。これは日本だけの問題ではなく、米国株、AI相場、グローバルなリスク資産全体に波及しうる。
さらに皮肉なのは、日本政府自身もまた、外為特会を通じて、円で資金を調達し、巨額の外貨建て資産を保有する構造を抱えていることだ。外貨準備は約1.3兆ドル。円換算では200兆円規模に達する。
円安と高い米金利が続く間、それは運用益を生む「隠れた財源」のように見える。だが、金利差が縮まり、円が反発し、介入で外貨準備を取り崩す局面になれば、これまで利益に見えていたものは、一転して制約になる。
かつて円は、危機の時に買われる「安全通貨」だった。だが現在は、地政学リスクが高まっても、エネルギー・食料を海外に依存し、財政余力も限られる日本の脆さが意識され、円が素直に買われにくくなっている。
世界は安い円を借りてリスクを買ってきた。
日本は安い円で財政の時間を買ってきた。
問題は、その時間の値段が、いよいよ上がり始めていることだ。
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