【米中が「頭脳」を奪い合う時代、日本は外国人を遠ざけている――AI人材競争が映す国家の磁力】 JVL | 8.11
日経が紹介した中国Moonshot AIの楊植麟CEOの経歴は、現在の米中AI競争を象徴している。清華大学から米カーネギーメロン大学へ進み、AI研究で博士号を取得。Appleから好条件の誘いを受けながら、それを断って中国へ戻り起業した。その企業が開発した「Kimi」は、いまや米国の最先端モデルを追う存在になっている。
楊氏には米国に残る選択肢があった。それでも中国を選んだ。つまり、中国側に資金、研究基盤、巨大市場、起業機会が整い、世界級の研究者にとって「帰国する合理性」が生まれている。
米国へ移動するAI研究者・開発者も2017年から89%減少した。米中競争は「中国人材を米国が吸収する構造」から、双方が世界の人材を奪い合う段階へ入ったと見るべきだろう。
そこで日本を見ると、かなり深刻である。
経産省自身が2026年、IT・AI・半導体分野の高度外国人材を海外から獲得する事業を進めている。OECDも、人口減少下で外国人材の活用をさらに進める必要があると指摘している。
ところが政治やSNSでは外国人を一括りに問題視する言説が強まり、「外国人をどう呼び込むか」より「どう制限するか」が政治的争点になっている。
これはあまりに時代錯誤ではないか。
米国は「優秀な中国人研究者をどう引き留めるか」を議論し、中国は「海外にいる中国人研究者をどう呼び戻すか」を考えている。その横で日本だけが、国内に来てくれた外国人まで居心地の悪い社会にして自発的に流出させるなら、AI覇権どころの話ではない。
これからの国家競争では、人材は半導体工場以上に移動しやすい戦略資源である。
優秀な人間は国籍ではなく、研究環境、待遇、自由度、家族の暮らしやすさ、そして「自分が歓迎されているか」で国を選ぶ。
米中が世界最高峰の頭脳を奪い合う時代に、日本が排外感情を政治的資源として消費するなら、その代償はいずれ産業競争力として返ってくるだろう。
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