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櫛野展正
@kushinon
アウトサイダーアートを紹介しています。日本唯一のアウトサイダー・キュレーター。アウトサイダーアートを扱う「クシノテラス」主宰。現在は、静岡県にある「アーツカウンシルしずおか」のチーフプログラム・ディレクター。京都芸術大学大学院芸術専攻修士課程修了(MFA)。研究テーマは高齢者の芸術表現「超老芸術」。
参加 December 2009
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櫛野展正
@kushinon
2026.08.23 22:30
現像すると、そこには自分の後ろにぼんやりと浮かぶ、もうひとりの人影が写り込んでいた。単なる現像ミスのはずだった。 1861年、アメリカ・ボストンの写真館で働いていたウィリアム・マムラーは、洗浄が不十分なガラス乾板を誤って使ってしまう。だが彼はこの写真を「亡くなった人の霊が写った」ものとして売り出した。折しも南北戦争で大量の死者を出し、心霊主義(スピリチュアリズム)が広く浸透していたこの時代、家族を失った人々は、故人の姿がフィルムに刻まれることを切実に望んでいた。 技法はいたって単純だった。二重露光でネガを重ねたり、あらかじめ人物を写し込んだ乾板を使い回したりするだけで、光の加減がハレーションとなって後光のように写り込み、まるで神々しい降臨のように見える一枚が出来上がる。1869年、マムラーは詐欺の疑いで裁判にかけられ、専門家によって手口が暴かれるものの、無罪となった。それでもこのスキャンダルで評判を失い、彼は表舞台から姿を消していく。 だが、失敗や偶然から生まれたこの"心霊写真"という表現は、マムラーひとりにとどまらなかった。19世紀末から20世紀にかけて、名もなき写真家や素人たちが同じ手法で、白く霞んだ人影や二重写しの奇妙な姿を量産していく。まだ映画も生まれていなかった時代、彼らは絵画や版画でしか描けなかった"奇跡"を、写真という新しい技術でリアルな形に変えてみせた。その表現は数年後、ジョルジュ・メリエスが特撮映画で見せる魔法のような映像へとつながっていく。
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