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中井 圭
@nakaikei
映画解説者。「映画の天才」「偶然の学校」代表。「文藝別冊 クリストファー・ノーラン 増補新版」「スティーヴン・スピルバーグ 映画の子」「森田芳光全映画」「観ずに死ねるか」など。各種媒体に映画評寄稿のほか、映画イベント登壇、審査も担当。日本酒、台湾、温泉、鮨、旅が好き。 nakaikei.work@gmail.com
参加 October 2009
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『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』(7/24公開)を観た。よくできていた。想像以上に恐ろしい物語だが、質の良いイヤミスのような後味の悪さを強く引き出しているのが、灰色に塗られた島民たち。 『ちいかわ』らしい明るく楽しげな画面のなかに佇む、無彩色の彼ら。ひと目では区別のつかない没個性的な造形によって、罪の所在を集団のなかに埋没させ、善と悪の境界を白黒つけずに曖昧にする本作の主題を象徴的に示している。 そして最も効果的なのは、『ちいかわ』自体がその個性的なキャラクターへの愛着や「推し」を生みやすい作品であるのに対し、本作の島民たちからそうした要素を局所的かつ徹底的に排除したことだ。そのため観客は、特定のキャラクターへの好悪によって判断するのではなく、そこで行われた恐るべき行為と、そこへ至った思考や選択そのものを見つめざるを得ない。 灰色の没個性的なキャラクターを通じて表現される「行為の匿名化」。それは、特別な誰かがその個性によって起こした事件ではなく、状況次第では誰の身にも起こり得る選択として提示される。自分もまた、知らないうちに同じような振る舞いをしているのではないか。そんな疑念を観客に突き刺してくるところまで含めて、実に恐ろしい映画である。 いわゆる子ども向きかと言われると少々疑念はあるものの、子どもたちの鋭い感性は、そこまで掴むかもしれない。大人が肝を冷やす夏休み映画。
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