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新田 龍
@nittaryo
働き方改革総合研究所株式会社代表取締役|労働環境改善による企業価値向上&採用定着支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防と評判改善支援|労働問題・パワハラ・カスハラ・クビ・炎上にまつわるトラブル解決の専門家|厚生労働省ハラスメント対策企画委員|福島県楢葉町働き方改革推進特命アドバイザー|著書26冊
参加 July 2009
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ハラスメント問題の専門家です。 佐藤二朗氏のハラスメント疑惑について、当事者およびフジテレビから出された公表情報から断言できる「明らかな問題点」について指摘しますね。 もちろん、佐藤氏と橋本氏との間で具体的にどんなやりとりがあり、その場の空気感がどうであったか等は、当事者と同席者にしか分かりません。したがって、現時点で把握可能な情報だけで、ハラスメント認定の当否を外部から断定することはできません。 しかし、佐藤氏側の声明、フジテレビ側の声明、報道内容を前提にすると、本件事案の問題点は明らかです。それは、 「フジテレビ側の制作管理、情報共有、環境調整、初動対応が極めて杜撰だった」 ということです。具体的に指摘していきますね。 第一に、共演上必要な演技上の制約・接触ルールは、クランクイン前に明確化しておくべきでした。 夫婦役であれば、身体接触、抱擁、ごく近い距離感でのやりとり等が起こり得ます。橋本氏のトラウマや過去の具体的な被害内容を相手役に開示する必要まではないにしても、少なくとも「予定外の身体接触は禁止」「顔・首・頭部には触れない」「身体接触が必要な場合は事前確認」「演出変更は監督・プロデューサー経由で行う」といった実務ルールは事前に共有しておくべきでした。 ここを曖昧にしたまま撮影に入った結果、佐藤氏側から見れば「知らされていないルールに対して後から違反と言われた」形になり、橋本氏側から見れば「安心して演じるための前提が守られなかった」形になったと考えられます。これは明らかに「制作側の段取りの失敗」といえるでしょう。 第二に、初回の接触トラブルが発生した後の対応が不十分でした。 翌日にレギュレーションを決めたこと自体は必要な対応です。しかし、その後もわだかまりが残る可能性があったなら、当事者同士の楽屋訪問や直接対話に任せるべきではありませんでした。特に、年齢、キャリア、立場、性別の差異があり、かつ過去の被害経験が絡む場面であればなおさら、仮に善意の会話であっても、受け手には強い圧力として伝わることがあります。 実際、佐藤氏側声明にある「その状況が続くなら俳優を続けるべきではないのではないか」という趣旨の発言も、本人としては「作品づくりのための率直な助言」のつもりだったかもしれませんが、「あなたはこの仕事に向いていない」という趣旨の評価として受け取られるリスクがありました。だからこそ、そういった当事者間のやりとりに発展する前に、制作側が明確なルールを示しておくべきだったということです。 第三に、フジテレビ側の声明は危機管理になっておらず、却って憶測を広めてしまっています。 フジテレビは「詳細は申し上げられない」としながら、「男性俳優の言動について厳重注意を行った」「外部弁護士の調査で問題視された」と公表しています。二次被害防止を理由に詳細を伏せるなら、処分情報だけを外に出すことにも慎重であるべきです。詳細を伏せたまま片方の行為だけが問題視された印象を残すと、かえって憶測が広まる結果になってしまいます。 「プライバシー保護」と「処分事実の公表」を両立させるなら、少なくとも制作側としての反省点、再発防止策、現場調整の不備の有無を説明しなければ、単に佐藤氏だけを悪者扱いした「トカゲの尻尾切り」のように見えます。 では、フジテレビはどの時点でどうすべきだったんでしょうか。これを全部説明するとかなり長くなってしまうので追って記事にまとめますが、佐藤氏が「降板させてほしい」と繰り返し訴えていたという話が事実なら、その時点で制作側は「重大アラート」として扱うべきでした。 降板を認めるかどうかは別として、少なくとも、撮影継続の可否、共演場面の削減、脚本変更、撮影順変更、第三者立会い、メンタルケア、双方事務所との協議等をその時点で行っておくべきだったでしょう。出演者が「もう限界」と言っているのに、作品完成を優先して現場を走らせ続けたなら、それはもう「マネジメント不全」でしかありません。 フジテレビは声明で「心理的安全性の保たれた制作現場づくり」を掲げておきながら、実際には当事者間の安全な距離、情報共有、役割分担、紛争処理のルートを設計できていなかったわけです。 ハラスメント対応で重要なのは、「事故を未然に防ぐこと」、「違和感が出た時点で止めること」、「当事者同士に処理させないこと」、「必要な情報だけを必要な人に共有すること」、そして「外に出た時には個人の断罪ではなく、組織の再発防止として説明すること」です。 今回の件は残念ながら、その全てが後手に回った事案といえます。 佐藤氏個人の言動の当否とは別に、フジテレビの制作管理責任は相当に重大です。現場のSOSを「作品を止めないための雑音」として扱った結果、ハラスメント対応は危機管理にならず、「炎上の先送り」になってしまったわけですから。
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