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鈴木一登/スポーツ鍼灸
@suzuki_kazuto33
野球のエラーを脳科学・心理学・身体から研究|鍼灸師・スポーツトレーナー|監督・コーチ向けに「なぜ練習ではできるのに試合で崩れるのか」を発信|Voicy「エラーの解剖学|野球とミスの脳科学」|チームセッション・講演の相談はDM 東京学館浦安高校野球部OB
参加 November 2011
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【球速を当てるだけで、ボールへの反応が速くなる理由】 バックネット裏で野球を見る時に、簡単にできる脳トレがあります。 それが、球速表示を見る前に「今の球は何キロだったか」を予測する方法です。 例えば、自分では135キロだと思ったボールが、実際には142キロだった。 この時に大切なのは、7キロ外したことではありません。 自分の脳が感じていたボールの速さと、実際の速さにズレがあったことです。 人間の脳は、ボールが来てから反応しているだけではありません。 投手がボールをリリースした瞬間から、「このくらいの時間で自分のところまで来るだろう」と先回りして予測しています。 特に野球では、この時間の予測がかなり重要になります。 135キロと142キロでは、打者までボールが到達する時間に数十ミリ秒の違いが生まれます。 わずかな差ですが、打撃ではこのズレが振り遅れにつながります。 「思ったよりボールが来るのが速かった」という感覚は、単純に反射神経が遅かったのではなく、脳が予測していた到達時間そのものがズレていた可能性があります。 そこで球速を予測します。 投手が投げる。 「140キロくらい」 そして表示を見る。 「146キロ」 この時に脳では、自分の予測と実際の結果を比較します。 これを予測誤差と呼びます。 脳は、この予測誤差を使いながら次の予測を少しずつ修正していきます。 特に小脳は、予測したタイミングと実際に起きたタイミングのズレを修正することに関わっています。 つまり、何度も球速を予測して答え合わせをすることで、「この見え方なら、このくらいの時間でボールが到達する」という内部モデルが細かく調整されていきます。 これはTime to Contact、つまり「対象があとどれくらいで自分のところまで到達するか」を感じ取る能力とも関係します。 だから球速当ては、単なるゲームではありません。 ボールの速さを数字として覚えるというより、ボールが迫ってくる時間感覚を脳に学習させるトレーニングとして使えます。 やる時は、毎球当てようとしなくて大丈夫です。 むしろ外れた時に、「自分は実際より遅く感じていたのか」「速く感じていたのか」を確認する方が重要です。 135キロだと思った球が142キロだった。 そのズレこそが、脳が修正するための材料になります。 打撃で必要なのは、球速表示を正確に当てる能力ではありません。 ボールを見た瞬間に脳が作る「このタイミングで来る」という予測と、実際にボールが到達するタイミングとのラグを小さくすることです。 バックネット裏で球速を予測するだけでも、その時間感覚を鍛える一つの方法になります。
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【なぜ陸上では、走る前から相手が速く見えるのか?】 陸上の試合では、まだレースが始まっていないのに、周りの選手が自分より速く見えることがあります。 招集所に入った瞬間、それまで普通だったはずの相手が急に強く見えてしまう。 これは単なる「気持ちの弱さ」ではなく、試合前の脳が情報を処理する仕組みと関係しています。 一つは予測処理です。 人間の脳は、目の前の情報をゼロから判断しているわけではなく、過去の経験や記憶から「たぶんこうだろう」という事前予測を作りながら知覚しています。 以前負けた選手や、記録を知っている選手を見れば、その情報が事前分布のように働き、「この選手は速い」という予測が先に形成されます。 すると実際の動きを見るときにも、その予測に引っ張られます。 少し動きが良かっただけでも、「やっぱり速い」と解釈しやすくなる。 これは確証バイアスに近い現象で、自分がすでに持っている予測と一致する情報に注意が向きやすくなります。 さらに試合前は状態不安が高まりやすく、扁桃体を中心とした脅威検出系も働きやすくなります。 ここで関係するのが注意制御理論です。 不安が高まると、本来は自分で注意を向けるトップダウン型の注意制御よりも、目立つ刺激に自動的に注意を奪われるボトムアップ型の処理が強くなります。 つまり「自分の準備に集中したい」と思っていても、脳は勝手に強そうな相手を拾ってしまうのです。 さらに社会的比較も入ります。 人間は自分の能力を判断するとき、周囲の人間を基準にします。 特に自分より能力が高そうな相手と比較する上方比較が起こると、自己効力感が下がりやすくなります。 「今日は厳しいかもしれない」という感覚が生まれると、今度はその予測が身体側にも影響し、覚醒水準が必要以上に上がったり、自分のフォームを意識的に修正したくなったりします。 ここまで来ると、相手が速いかどうかより、自分の脳が作った「相手は速い」というモデルの方が大きな問題になります。 試合前に必要なのは、相手を見ないことではありません。 「速そうに見える」という知覚そのものが、状態不安、予測処理、注意バイアスによって歪む可能性があると知っておくことです。 陸上では、号砲が鳴る前から脳は勝敗を予測しています。 だからこそ、走る前に相手が速く見えたときほど、その感覚を事実だと決めつけないことが大切です。
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