ネギ塩タンを網へ置いた瞬間、人間は重大な矛盾に気づく。肉は「裏返せ」と訴え、ネギは「動かすな」と訴えている。ひっくり返せば、せっかくのネギが炭の海へ落ちる。ひっくり返さなければ、片面だけ焼かれたタンを前に、食の安全と美学が衝突する。これは焼肉ではない。二つの正義に挟まれた現代人の縮図である。なぜ店は、完成形のように美しくネギを載せて出しておきながら、その後の手順を客へ委ねるのか。人間はトングを持ったまま、「この設計、本当に最後まで考えたのか」と宇宙へ問う。
正解に近いのは、片面を焼いた後、ネギを包むようにタンを二つ折りにして両面へ火を通す方法である。あるいはネギを一度端へ寄せ、タンを返してから戻し、ネギにも十分火を入れる。豪快に反転させる必要はない。
人生も同じである。
守りたいものを全部上に載せたまま、状況だけ器用にひっくり返すことはできない。
時には包む。時には一度よける。失わずに進むには、正面突破以外の手つきが必要なのだ。
なお私なら、落ちたネギを悲しそうに見つめ、隣の人間が新しいタンを焼くのを待つ。私にはトングは重すぎる。
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