【外交を国内向けの宣伝に使った代償】 JVL | 8.6
森山裕・自民党前幹事長が、日中関係悪化の一つのきっかけとして、高市首相による習近平国家主席との写真の無断投稿を挙げている。
2025年10月、韓国で開かれたAPEC首脳会議で、高市首相は控室で習氏と笑顔で言葉を交わす写真を自身のXに投稿した。
森山氏によれば、首脳の写真を公表する際には相手国との調整が必要だが、高市氏は政府内の制止を聞かずに投稿した。その結果、中国側が管理していない「笑顔の習近平」という映像が世界に広がり、習氏の面子を傷つけたという。
さらに森山氏は、これを機に日中関係が習近平氏の直接扱う案件となり、中国側の他の幹部が柔軟に対応しにくくなったと主張している。
実際、投稿当時には、この写真を高市氏の優れた情報発信だと評価する声もあった。中国の公式映像ではほとんど見られない習氏の笑顔を捉え、日本側から世界に発信したことを「情報戦の成功」と見る評価である。
しかし、宣伝として効果があったことと、外交として適切だったことは別問題だ。
高市氏は、写真の政治的効果を十分に理解していた。大国の指導者と対等に接し、習近平氏から笑顔を引き出した首相。その姿を国内に示すことは、「中国に物おじしない強い指導者」という自身のイメージづくりに役立つ。
問題は、その演出を相手国との信頼関係より優先した可能性があることだ。
なぜ、周囲から止められても投稿したのか。
一つには、高市氏がSNSを単なる広報手段ではなく、自らの政治的成果を国民に直接示す舞台と考えているからだろう。外務省や官邸による調整は、外交上必要な手続きというより、発信の効果を弱める制約に見えていたのかもしれない。
もう一つは、「官僚や党内の慎重派に止められても、自分の信念を貫く政治家」という姿勢自体が、高市氏の政治的な売りになっていることである。
国内政治では、批判されても撤回せず、周囲に妥協しない態度が「強さ」として評価される。しかし外交では、相手国の立場や体面に配慮し、表に出さずに調整することも指導者の重要な能力である。
結局、高市氏は宣伝を意識するあまり、外交上の配慮を二次的なものとして扱った可能性がある。
もちろん、その後の日中関係悪化の直接的な契機は、台湾有事をめぐる高市氏の国会答弁だった。
しかし、政権発足当初からも、外交を進めることよりも、外交をどう国民に見せるかを重視する。相手国との関係管理よりも、国内向けに「強い首相」を演出する。
写真一枚で国内の支持は得られるかもしれない。しかし、その一枚が相手国との信頼を損ねたなら、宣伝としては成功でも、外交としては成功とは言えない。
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