A conflict management/transformation researcher and practitioner in Asia. 紛争解決の研究と実践。マレーシアが1990年以来の生活拠点ですが、途中、英国2年、NZ5年、ブルネイ6年、バングラデシュ3年半、タイ1年。2024年8月から再びマレーシア。
ロシアは情報戦に勝ち、戦争にも勝っている
戦場の現実と、私たちが日々目にする報道やSNSの情報は、正反対の様相を呈している。これは単なる見解の相違ではなく、紛争の帰趨を左右する本格的な「情報戦」の様相だ。
私がこの目で見てきた事実を、包み隠さず伝えよう。
現在、西側のメディアはウクライナによるドローン攻撃の「成果」を大々的に報じ、あたかもロシアが後手に回り、政権の動揺さえ始まっているかのような印象操作を仕掛けている。しかし、これは極めて悪質なプロパガンダである。例えば、ロシアの石油精製施設への攻撃が話題になるが、60キロの弾頭が直撃しても、その頑丈な構造ゆえに「ポン」という音しか立てられない。実際に恒久的に閉鎖されたロシアの製油所は一つもなく、むしろ計画的なアップグレードの機会としている節さえある。
この情報戦の核心は、ロシア国内のごく一部に存在する「西側に共感する層」に揺さぶりをかけ、プーチン大統領の求心力を削ぐことだ。彼らは9月の議会選挙などを「政権脆弱性の窓」と騒ぎ立てるが、支持率80%近いリーダーがそう簡単に揺らぐはずがない。これは、ウクライナが戦略的主導権を握っているという偽りの現実を創り出すための情報工作に他ならない。
では、ドローン戦の実態はどうなっているのか。私は前線でロシアのドローン指揮官や技術者たちと直接話をした。
彼らは異口同音に「ウクライナ軍は確かに優秀だ」と認めた。だが、それは「我々は勝っている」という余裕の口調での発言である。象徴的な事例が、グーグル元会長が出資する企業が開発した「ホーネット」ドローンだ。これが投入された当初、西側は「死のハイウェイ」の出現だと騒いだ。しかし、ロシア軍はすぐに残骸を回収して分解し、その対抗策を既に確立していた。問題が現れるたびに、ロシア側の解決策がそれを上回っているのだ。
数字がこの現実を如実に物語っている。ウクライナがエネルギー施設攻撃に使う長距離ドローンは、これまでに555機が投入され、目標に到達したのはわずか5機に満たない。驚異的な迎撃率99%以上である。
これはもはや、単なる「防空の成功」ではない。
より致命的なのは、ドローンを操る「人間」の損耗だ。ロシア軍の戦場監視能力とAIによる即応分析は、ウクライナ側の想像を絶する水準に達している。戦場のわずかな異変も見逃さず、ウクライナのドローン指揮所は1日あたり8から10か所が破壊されている。これは1日で最も熟練したオペレーター80人から100人が失われている計算になる。熟練オペレーターの育成には半年かかるが、その補充は絶望的だ。これが、報道されない本当の「戦略的消耗戦」の姿である。
こうした実態を無視して、NATO首脳会議ではウクライナ支援の継続や、国内での兵器ライセンス生産などが華々しく謳われた。しかし、戦場を完全に俯瞰するロシア軍が、巨大な兵器工場の建設を指をくわえて見ていると思うだろうか。どんな施設も、稼働前に破壊されるのがオチだ。パトリオットミサイルのライセンス生産など、絵に描いた餅に過ぎない。
それでもロシアがエスカレーションの階段を駆け上がらず、NATO諸国への直接攻撃といった選択肢を取らないのはなぜか。その答えは、プーチン大統領がサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで見せた態度にあった。
誰もがウクライナ戦争への言及を予想した演説で、彼は戦争ではなく、ロシア経済の安定と長期的成長こそが国の未来を決すると語ったのだ。彼にとって戦争は、通過しなければならないが、国の進路を定義するものではない。戦場で決定的な優位に立つ今、自らゲームのルールを変える必要はない、という圧倒的な戦略的余裕がそこにはある。
プーチン大統領が求めるのは、5年や10年で再燃する和平ではない。ウクライナという国家の「非ナチ化」を完遂し、二度と同じことが起きない安全保障環境を築くことだ。その終着点を理解すれば、西側メディアが流す「ロシアの窮状」や「停戦交渉の機運」といったニュースが、いかに現実から遊離しているかが分かるだろう。
問題は、私たちが消費する「情報」が、現場のリアルと完全に切断され、誰かの願望によって構築された虚構かもしれないと、あらゆる人が自覚しなければならないことだ。このズレこそが、最も危険な戦略的リスクである。
—
Scott Ritter(元国連大量破壊兵器査察官、元米海兵隊情報将校)、Glenn Diesen(政治学者)
対談『Scott Ritter: Russia Is Winning the War - and Winning Decisively(スコット・リッター:ロシアは戦争に勝利している——しかも決定的に)』
ロシアは情報戦に勝ち、戦争にも勝っている
戦場の現実と、私たちが日々目にする報道やSNSの情報は、正反対の様相を呈している。これは単なる見解の相違ではなく、紛争の帰趨を左右する本格的な「情報戦」の様相だ。
私がこの目で見てきた事実を、包み隠さず伝えよう。
現在、西側のメディアはウクライナによるドローン攻撃の「成果」を大々的に報じ、あたかもロシアが後手に回り、政権の動揺さえ始まっているかのような印象操作を仕掛けている。しかし、これは極めて悪質なプロパガンダである。例えば、ロシアの石油精製施設への攻撃が話題になるが、60キロの弾頭が直撃しても、その頑丈な構造ゆえに「ポン」という音しか立てられない。実際に恒久的に閉鎖されたロシアの製油所は一つもなく、むしろ計画的なアップグレードの機会としている節さえある。
この情報戦の核心は、ロシア国内のごく一部に存在する「西側に共感する層」に揺さぶりをかけ、プーチン大統領の求心力を削ぐことだ。彼らは9月の議会選挙などを「政権脆弱性の窓」と騒ぎ立てるが、支持率80%近いリーダーがそう簡単に揺らぐはずがない。これは、ウクライナが戦略的主導権を握っているという偽りの現実を創り出すための情報工作に他ならない。
では、ドローン戦の実態はどうなっているのか。私は前線でロシアのドローン指揮官や技術者たちと直接話をした。
彼らは異口同音に「ウクライナ軍は確かに優秀だ」と認めた。だが、それは「我々は勝っている」という余裕の口調での発言である。象徴的な事例が、グーグル元会長が出資する企業が開発した「ホーネット」ドローンだ。これが投入された当初、西側は「死のハイウェイ」の出現だと騒いだ。しかし、ロシア軍はすぐに残骸を回収して分解し、その対抗策を既に確立していた。問題が現れるたびに、ロシア側の解決策がそれを上回っているのだ。
数字がこの現実を如実に物語っている。ウクライナがエネルギー施設攻撃に使う長距離ドローンは、これまでに555機が投入され、目標に到達したのはわずか5機に満たない。驚異的な迎撃率99%以上である。
これはもはや、単なる「防空の成功」ではない。
より致命的なのは、ドローンを操る「人間」の損耗だ。ロシア軍の戦場監視能力とAIによる即応分析は、ウクライナ側の想像を絶する水準に達している。戦場のわずかな異変も見逃さず、ウクライナのドローン指揮所は1日あたり8から10か所が破壊されている。これは1日で最も熟練したオペレーター80人から100人が失われている計算になる。熟練オペレーターの育成には半年かかるが、その補充は絶望的だ。これが、報道されない本当の「戦略的消耗戦」の姿である。
こうした実態を無視して、NATO首脳会議ではウクライナ支援の継続や、国内での兵器ライセンス生産などが華々しく謳われた。しかし、戦場を完全に俯瞰するロシア軍が、巨大な兵器工場の建設を指をくわえて見ていると思うだろうか。どんな施設も、稼働前に破壊されるのがオチだ。パトリオットミサイルのライセンス生産など、絵に描いた餅に過ぎない。
それでもロシアがエスカレーションの階段を駆け上がらず、NATO諸国への直接攻撃といった選択肢を取らないのはなぜか。その答えは、プーチン大統領がサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで見せた態度にあった。
誰もがウクライナ戦争への言及を予想した演説で、彼は戦争ではなく、ロシア経済の安定と長期的成長こそが国の未来を決すると語ったのだ。彼にとって戦争は、通過しなければならないが、国の進路を定義するものではない。戦場で決定的な優位に立つ今、自らゲームのルールを変える必要はない、という圧倒的な戦略的余裕がそこにはある。
プーチン大統領が求めるのは、5年や10年で再燃する和平ではない。ウクライナという国家の「非ナチ化」を完遂し、二度と同じことが起きない安全保障環境を築くことだ。その終着点を理解すれば、西側メディアが流す「ロシアの窮状」や「停戦交渉の機運」といったニュースが、いかに現実から遊離しているかが分かるだろう。
問題は、私たちが消費する「情報」が、現場のリアルと完全に切断され、誰かの願望によって構築された虚構かもしれないと、あらゆる人が自覚しなければならないことだ。このズレこそが、最も危険な戦略的リスクである。
—
Scott Ritter(元国連大量破壊兵器査察官、元米海兵隊情報将校)、Glenn Diesen(政治学者)
対談『Scott Ritter: Russia Is Winning the War - and Winning Decisively(スコット・リッター:ロシアは戦争に勝利している——しかも決定的に)』