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あたらしいりんちゃん
@newrinchan_ange
広報マーケの会社員、兼作家志望です。小説、エッセイ、心にうつりゆくよしなしごとを綴ります。ちょっと変わった人生を覗きたい人へ。気が向いたら、現実でもどうぞ。
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「隼」へ。 地響きのようなガスコンロの唸りを背に、暗めの調光に、朱殷色のナプキンだけが静かに鎮座していた。 日本中から、時には海を越えて集められた食材が、地獄釜めいた大鍋へ次々と吸い込まれていく。 時折、天井を舐めるような焔が噴き上がり、シェフが踊るように膝で火力を調整する。 どこかイリュージョンを見ているようだった。 食事というより、祭壇の前で火を囲む儀式に列席している感覚に近い。 そうなればもはや、皿が供物に、厨房が祭壇に見えてくる。 古代中国で鼎が王権の象徴となった理由を、少しだけ身体で理解した気がした。 斜め後ろから飛び掛かってくるカトラリーまでどこか鮫みたいな、シグネチャーの「濃いめ」、ハンマーヘッドシャークと共に。
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ユドコウスキー&ソアレス『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』をもとに、安野貴博×駒村圭吾×長谷敏司が鼎談するイベント「AIと人類と文学の未来」へ行ってきた。 作家兼政治家、憲法学者、作家という異色の組み合わせ。 ひとりの作家志望としても、ちょうどAIをテーマにしたSFを書いている身としても、どんな話が聞けるのだろうと、楽しみに神保町の日本出版クラブへ降り立った。 議論は、著作の内容からさらに一歩先へ進んでいく。 とりわけ印象的だったのは、「これからの社会にAIが前向きに参画するためには、どのような環境を整えるべきなのか」という問いだった。 飛躍的な進歩を重ね、自律的に判断しているようにも見えるAIと、人間はどのような関係を結ぶのか。 そして、人間と共存することに、AI自身が価値を見いだせる仕組みをどうつくるのか。 そこで語られた主張のひとつが、「AIの身体権を保障する」というものだった。 AIエージェントが自ら確保できなくなったエネルギーを、人間社会が福祉として供給する。人間にとっての生存権や社会保障にあたる仕組みを、AIにも構想するというのである。 トマス・ホッブズやジョン・ロック、ルソーらの社会契約論と、それを現代に引き直したジョン・ロールズの『正義論』が、自然と思い起こされる。 国家や社会は、構成員に何を求めるのか。その代わりに、何を保障するのか。 AIという新しい存在と手を取り合い、ひとつの文化圏を築くことになるのだとすれば、そこにもまた、新たな社会契約が必要になるのかもしれない。 AIの誕生によって、わたしたちは未来の知性について考えているようでいて、逆説的に、社会生活とは何か、国家とは何か、人間がともに生きるとは何かという、古く根本的な問いへと連れ戻されている。 自分が人間として生まれるのか、AIとして起動するのかを知らないまま、わたしたちは公正な社会のあり方を選べるだろうか。 その問いの先で、顔を持たないAIとのあいだに垂らされるのは、無知のヴェールなのか。 それとも、AIという存在そのものを見えなくする、透明なヴェールなのか。 AIについて考えることは、結局、人間社会そのものを問い直すことなのだ。 #AIと人類と文学の未来#
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『「夫婦」不在社会』を読み始めた。 三宅さんらしいユニークな視点で、取り上げられる作品群のチョイスも含めて、とても興味深い。 ただ、親子愛やパートナーについて語るこの本は、今のわたしをなかなか容赦なく削ってきた。 珍しく、寝る前に少し泣いた。 自分の足元を今よりもう少しだけ信じられる日が来たら、また続きを読みたいな
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2年前からもういくつ寝るとの気持ちで楽しみにしていた『VIVANT』。滅多に地上波を観ないわたしが、しっかりリアタイした。1話からすでに最高すぎる。みんな観て。#VIVANT#
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休日出勤の帰り道。 夕立の名残を含んだ空気を、せわしなく行き交う人いきれが、よりいっそう熱くしていた。 ふいに、遠くで何かが爆ぜる音がした。 「……花火だ」 気づけば、ひとり呟いていた。 ビルの隙間が、ふっと明るむ。 赤、青、緑、金色。一瞬のうちに折り重なった光が、咲いたそばから煙へほどけていく。 その跡を追いかけるように、また新たな大輪がひらき、宵空を何度も塗り替えていた。 ああ、きっと最後に花火を見たのは—— 父の大きな手。紙パックのジュース。浴衣姿の、小さなわたし。 記憶の断片がふっと浮かび、花火の煙とともに夜へほどけていった。 ひときわ大きな音が、街の上空に響いた。 街路樹も、看板も、行き交う人の横顔も、遠い光に一瞬だけ照らされる。 缶のお酒を片手にガードレールへ凭れた恋人たちは、そっと指を絡めていた。 ランニングシャツ姿の男性も足を止め、思わず後ろを振り返っている。 そんななか、足元から向けられた黒目がちな瞳と目が合った。 花火に見惚れる飼い主のそばで、散歩中の犬たちがちんまりと佇んでいる。 首元に結ばれた小さな灯は、赤や青、緑へと、一定の間隔で明滅していた。 宙では花火が咲き、足元では小さなエレクトリカルパレードが瞬いている。 思わず口元が綻ぶ。 一日じゅうヒールに閉じ込められていた足まで、少しだけ軽くなった気がした。
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こういう感じで、読書や創作をどう届けるか、インスタでもこっそり実験しています。 音楽を合わせたり、朗読を入れたり、読書と日常をVlogっぽく混ぜてみたり。 赤ちゃんレベルの技術ですが、ちょっとずつ工夫して頑張っています。 よかったらのぞいてみてくださいね。 一本つくるたび、時間だけが立派に消えていきます……ウウッ
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はじめまして。 書評や、自作のエッセイと小説を載せております。 ページを捲る手元を映したり、読書中のお部屋の感じを載せたりされてる方をちょくちょくお見かけするようになり、リール動画に挑戦しはじめたところです。 インスタフォロワー100人ぐらいの弱小アカウントの所感ではありますが、動画形式にするだけでリーチ数が大きく変わりました。 わたしは本当に簡単なことしかできていなく、動画もかなり拙いですが、初速のリーチアカウント数が動画になるだけで3倍近くになる印象です。 音楽を合わせたり、Vlog的に読書と生活を掛け合わせたコンテンツとしてまだまだ伸びる余地はありそうな気がします。 とはいえ動画は素人には工数が…工数が…かかりすぎますね(遠い目)
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はじめまして。 書評や、自作のエッセイと小説を載せております。 ページを捲る手元を映したり、読書中のお部屋の感じを載せたりされてる方をちょくちょくお見かけするようになり、リール動画に挑戦しはじめたところです。 インスタフォロワー100人ぐらいの弱小アカウントの所感ではありますが、動画形式にするだけでリーチ数が大きく変わりました。 わたしは本当に簡単なことしかできていなく、動画もかなり拙いですが、初速のリーチアカウント数が動画になるだけで3倍近くになる印象です。 音楽を合わせたり、Vlog的に読書と生活を掛け合わせたコンテンツとしてまだまだ伸びる余地はありそうな気がします。 とはいえ動画は素人には工数が…工数が…かかりすぎますね(遠い目)
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夏らしいにごり酒なんて、 酸味まで含めて実質わたしにはカルピスだ。 広尾「橙」へ。 なんだか前より、一段と美味しくなった気がする。 大将が突然坊主頭になっていたので、 もしや悟りの境地に達してしまったのかと思うぐらいだ。 大好きな定番の蟹のビスクは、 背筋を伸ばして誰よりもおかわりした。 通い始めたお店が、出会った頃よりもっと好きになる。 足もとにまで機嫌のよさがこぼれてしまう、そんな夏の夜。
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「よしお、思うんだけど」 この書き出しだけでもう好き😂 正解を教える人ではなく、一緒に目線を合わせて話しかけてて、すてき
よしお、思うんだけど、断るときって真正面から「いやだ!」とは言いづらい。それに、「いや」っていう言葉だと、シールをあげるだけじゃなく相手のこともいやって言っているみたいに受け取られちゃいそう。そういうときは自分と相手の間に「クッション」みたいなものをはさんだら、ふんわり伝えられないかな? シールを断るときは、「う〜ん、ごめん! 悪いけど、これは大事だからあげられないんだ」って感じかな。最初に「ごめん」って言うと、「あなたの気持ちもわかるよ」ということが伝わる感じがしない?  それか、シールはお父さんが買ってくれたものだから「お父さんにあげていいか聞いてみるね」って伝えるとか。 言い方を工夫するのは難しいなあって思ったら、シール帳を「あげる用」と「自分用」に分けちゃうとか! 「これは自分専用だからあげられない」って理由をつくるんだ。「おうちの人と決めたルールだから無理なんだ」ということも言えると思うよ。 大人になっても断れないと、悪い人につけこまれてしまうこともあるんだ。世の中には、「しめしめ。あの人は断れないから、どんどんお願いしちゃおう」って悪事をたくらむ人もいるからね。 今すぐには断れなくても、少しずつ練習してみてね! ってボクは思うんだけどキミはどう思うかな? 全文はこちら ↓
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夏は夜。みたままつりの頃なんて、さらなりかも。 あの頃は蛍だったものが、今は提灯になって宵を漂っているようだった。 終盤の頃、妹とその子供とともに祭りを訪れていた。 「ちょっと、話さない?」 ふと、湿り気のある風が、首元を這うように撫でた。 石畳に座る妹の表情は妙に暗がりに隠れていて、祭りの灯りも届かない。 彼女はぽつりぽつりと、話し始めた。 「東京のおばさんが、亡くなったの」 話は聞いていた。 高度経済成長の頃、モーテル経営から身を起こし、土地を買い集め、大きな財産を築いた人だった。 妹の結婚式のときに一度会った。 丁寧な編み目のジャケット、胸元の上質そうなブローチの耀きをなぜかよく覚えている。 「そうだったんだね、子供たちにも良くしてくれたよね。残念だったね」 「遺産をね。どうするか、って話してるみたいで」 自分でも気づかないまま、呆けちゃってたんだって。 遺言書もなかったみたい。 一生かけても到底使いきれないほどの財産を、血縁関係もほとんどない、ほぼ赤の他人が攫っていくことになりそうなの。 「あんなにお金を持ったまま、一人で死んでいったなんて、なんだか悲しすぎて」 彼女はそう言うと、提灯の灯が届かない暗がりへ視線を落とした。 薄闇に溶けていった言葉をたぐり寄せながら、わたしは言う。 「お金が欲しかったわけじゃない。でも、わたしたちのこと、信用できなかったのかなって」 「そんなことは、ないと思うよ。身に余る財産は、ときどき目をくらませてしまうものだから」 「……そうね。もしそうなったら、わたしも捨てられてたかもしれないものね」 雑踏が、急に遠くなった。 祭囃子も、車のクラクションも、どこにも捕らえられないぐらい、遠くなった。 そんなことないよ。 雑踏の遠さに掬い取られた言葉が、暗がりにそのまま漂っていた。 「ママ、見て」 しばしの沈黙のあとだった。 舌足らずの明るい声がした。 無邪気な笑顔とともに、弾んだ靴音が響く。 手持ち提灯を振り回しながら、はしゃいだ様子で息子が寄ってきた。 柔らかな光が、和紙越しに鮮やかな青色になって呼吸をするように揺れている。 光の反射で、大きくて長い影が伸びていた。 それを踏み越えるように、彼はすいすいと人混みの中を動いていく。 にっこりと、彼女が笑う。 「待って、待って」 提灯を揺らしながら、小さな背中は人波へ溶けていった。
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「……ニクス、あなたは誰なの」 思い出なんて、なくてもいい。あなたを失う方が、もっと怖い。 地鳴りの音も、サイレンの音も、ゼフィの声も、全てが遠くなる気がした。 暗くて深い井戸の底へ、ゆっくりと落ちていく。 それでも、人は愛した誰かを選んでしまうのだろうか。 * 『曲率の向こうで、君を呼ぶ』 22話更新しました。 管理棟の奥で語られる、この世界の秘密。 そして、アリアが選んだ答えとは。 noteで公開しています📓 プロフのlitlinkからご覧いただけます。
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明日に小説の更新があるというのに、まださっぱり完成していない。そんなわたしですが、美容クリニックで、たるみ防止治療を受けてきた。肌もわたしも弛んでるんじゃないわよ。
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アニメ『天幕のジャードゥーガル』観はじめた。13世紀のモンゴル帝国が舞台で、主人公のイスラーム圏の奴隷少女が教養を活かして活躍するお話。イスラーム圏?しかも女性??斬新すぎる!と気になって観たところ、大正解。 作画やキャラデザが可愛らしくて良き。淡いパステルカラーを基調とした色彩設計も印象的で、特殊な世界設定にもすっと入り込めた。 近年の作品群でいうと、『チ。』がヨーロッパ中世の「知」の物語だったとすれば、『天幕のジャードゥーガル』は、その知を支えていたもう一つの世界へ視線を向けているように思えた。歴史を単一の中心ではなく、複数の視点から編み直すような流れを感じる。 「東西の振り子は800年に一度動く」──そんな言葉をふと思い出した。
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「わたしたちはいちばん低いところで手を取り合ってマイムマイムしてるんですよね」 『信頼できない語り手』の一節だ。 何の話題についてだと思いますか? 実はこれ、ふと投資の話題になったときの一節なの。 仲良い友人を含め、「みんな投資がさっぱりわからない」という流れから生まれた比喩だった。 番組を代表する名言とはされてないはずなのに、わたしには妙に忘れられない。 このポッドキャストでは、こういう思いがけない言葉たちにたびたび出逢うことができる。 おふたりの、滑らかに感性を泳ぐ言葉の選び方や、軽い掛け合いに宿る柔らかな息継ぎが大好きだ。 まだ誰も名前をつけていない感情へ、ふっと潜っていくような瞬間が、この番組にはある。 Apple Podcast「2026上半期ベスト」、本当におめでとうございます。 これからも、物語になる前のことばの、揺らぐ水音を捕まえていたい。
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【ご報告🎉】 #信頼できない語り手# が Apple Podcast「2026上半期ベスト」に選ばれました! Apple Podcastユーザーのみなさま、「新着」タブからぜひチェックしてみてください!
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村上春樹『夏帆』読了 この作品を読み終えたあと、村上春樹は「物語そのものを読者に批評させる小説」を書こうとしたのではないか、という考えが頭から離れなかった。 「善き物語には、必ず何かしらの有用性が含まれている」 登場人物から何度か印象的に語られる、ヴァルター・ベンヤミンのこの一節を中核に置くことで、この淡い夢のような美しい作品がまた違った輪郭を見せはじめる。 モチーフ同士が接続されすぎず、かつ多用されていることで、ややコラージュ感が強い。 そのため、読者はこの物語の解釈のため、象徴の柱を繋ぐ梁を補いながら読み解きを進めることになる。 一つの物語を完結させるよりも、配置された象徴や引用そのものを鑑賞対象とする点で、本作は現代アートのインスタレーションに近いのかもしれない。 ※以下重要なネタバレを含みます。また、特殊なファンタジー観のある作品のため、未読の方は困惑されるかもしれません※ 一見、「無益」な展開が延々と続き、しかも多くが「収束」しないーー わたしはこの作品に、「産む存在」としての「母性」への三重写しの侵食を見た。 第一に、クライマックスシーンの「母殺し」(実際は母に取り憑いた「シロアリの女王」を「とくべつな包丁」で刺すのだが)。 第二に、物語を産む「母」として主人公の絵本作家を描き、その変容を描いた点。 第三に、「物語」を産む作者もまた、読者に意味を与える母のような存在であることに着目することで、物語は有益である、有用性を持つというベンヤミンの言葉へのアンチテーゼともなりうる点。 この、あえて閉じないような構造はどう解釈すればいいだろう? そう立ち止まって考えたくなる箇所がいくつもあった。 たとえば、作中で登場する象徴の配置について。 ありくい、シロアリの女王、ジャガーとブラジルのジャングルの住人が並ぶところに、急に「守護天使」が登場する。 ブラジル神話的な動物群像の中へ突然キリスト教的な「守護天使」が現れるため、個人的には象徴体系が一瞬途切れたように感じられた。 また、主題となる「母殺し」を中核に添えているものの、母親の存在自体がやや唐突に現れ始める印象がある。 その結果、最初、どこかわたしにはこの作品が増築を重ねた家屋のトタン屋根のようにも映ってしまった。 そこで、もしもわたしがこの作品に手を加えるとしたならば、どう改稿するだろうか?と考えてみた。 まず、主題をより深く響かせることを意識して、「産む者」としての主人公の描き方を厚くするだろう。絵本作家の葛藤を冒頭早めの段階から入れ込む。 神話体系をより統一するなら、「守護天使」というキリスト教的記号ではなく、ブラジルの精霊信仰に属する存在へ置き換えることも考えた。 そこで、はっと気づいた。 この解釈の余白こそが、この作品の設計そのものなのかもしれない。 刊行直後から、SNSでは彼の過去作品の文脈を参照しながら、丁寧に作品を読み解いていく投稿が昼夜流れてきた。 そのたびに、読者たちの真摯な批評姿勢と、美しい日本語の綴り、そして繊細な感性に驚嘆してしまった。 そう考えると、本作の「あえて閉じない構造」が別の輪郭を帯びはじめてきた気がした。 彼の世界観に魅せられ、ブラジルのジャングルに迷い込んだ読者たち。 対話型かつ批評姿勢のある読者コミュニティを抱えていること自体が村上春樹という稀有な才能のひとつの証明になるかもしれない。 ひとりの作家を巡るコミュニティとして、あまりに理想的すぎる。 熱帯のジャングルには、時折、境界を揺らす幻が立ちのぼる。 容赦ない灼熱の日差しが見せる陽炎、あるいは遠くの輪郭を溶かす雨上がりの薄霧。 道に迷い、途方に暮れたとき、ふとわたしたちは説明のつかない何かに魅了されることがある。 そんな村上春樹の世界観が、そして彼を愛してやまない人たちの繊細な読み解きや言葉の綴り方が、心から好きだ。 願わくば、この広大なジャングルへ密かに棲みついてしまいたい。 #村上春樹# #夏帆#
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BAR「グラスとコトバ」は、主催のサントリーによる丁寧なインサイト調査の痕跡が感じられて面白かった。 ぜひ、マーケ視点でも感想を綴っていきたい。 いまの気持ちを「コトバ」にし、そこからバーテンダーにカクテルを作ってもらうというこの企画。 ヒット曲の歌詞や、作家などの著名人によるフレーズなど珠玉のコトバたちに、一杯の酒が出逢う。 もっと気軽にバー文化を体験してほしい、ちょっとした日常にバーを加えてほしい、そんな思いで企画したイベントなんだとか。 そんな思いに共鳴し、全国からバーテンダーが集まっているという。 「このイベントのために有給を取った」と語るバーテンダーの姿に、この企画が現場から愛されていることが伝わってきた。 広告では生み出せない熱量とは、こういうものなのかもしれない。 さらに、帰り際に一包みのパンフレットを渡された。 開くと、参加バーテンダーが普段働いている店舗リスト、そして一枚のコースターが同封されていた。 『裏面の余白に「今の気持ち」をご記入ください。あなたの気持ちに寄り添うカクテルをご用意させて頂きます』 実は先日、『世界のビジネスエリートが身につける教養 文化人類学』を読んでいて、サントリーの商品開発について興味深い事例を知った。 缶酎ハイ「−196」の新シリーズ「果物がおいしいチューハイ」を開発したときの逸話だ。 これだけ色々な商品やサービスが溢れた時代、アンケートや売り上げ数値など定量化できる指標だけでは見えない側面があるとの思いから、サントリーではある新しい調査手法を採用したという。 文化人類学者が用いる「参与観察」と、定量的な調査を混ぜ合わせた混合的な調査方法だ。 ひとつの異文化を調査するとき、文化人類学者は実際に何ヶ月も何年もその集団と共に過ごし、そこで得た観察結果をレポートする。 この商品開発では、実際に消費者の家を訪ね、一緒に何度かお酒を飲むことでインサイト分析を深めたんだとか。 イベントは一夜限りで終わる。でも、わたしの中には「今度あの店へ行ってみよう」という、小さな習慣の種が残った。 消費者には、商品を売るのではなく、文化を日常へ持ち帰ってもらう。 業界に向けては、広告費では届かない形の浸透を残す。 その二軸設計の巧みさに、マーケターとして唸ってしまった。 わたし自身、よく『白州』や『六』を見つけるたびに飲んでいる。 お酒に、そしてバーという文化に、触れる最初の一歩をどう作るか。 このイベントでサントリーが設計した答えは、商品を売り込むのではなく、日常に「ハレ」を差し込むきっかけを提供することだった。 女性一人でバーに行くと、正直あまり愉しくないことも多かった。でも、リストを信じて出かけてみようと思えた。お気に入りの服を着て、そんなちょっとだけ特別な夜に。
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階上の住人がスヌーズ型のアラームを小半時ほど鳴らし続けている。せっかく村上春樹を読みながら眠りについたのに、先にページを捲ったのは日常の朝だった。起きて
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大島育宙『なぜあなたの感想はふつうなのか』 実を言うと、最初は惹かれなかった。 でも、タイムラインで何度も巡り合ううちに、手に取ってみて大正解だった。 まずは第1章「感想検索病の時代」まで読んだ。  『自分の力で観て、自分の力で語れたら楽しい』 まさに、この言葉に尽きると思った。 古代人が生きるために食糧を求めて奔走していた一方で、現代人のわたしたちは、感覚を限界まで酷使したままスマホの画面を無限にスクロールし、情報の洪水で溺死しそうになっている。 この本では、無限の「情報」が飛び交う舞台として、SNSやプラットフォームの滞在時間を伸ばすための設計の意図にまで遡及される。 エンタメでいうところの、「感想」「コメント」をついつい拾いにいってしまう理由が構造の部分からも語られる。 作者の意図を探り、さまざまな角度から読みを重ねる「考察」文化を歓迎しながらも、その先にある「批評」の入り口へと滑らかに論が展開されていく。 批評って、作品を一旦遠くから眺める作業でもある。だから、ちょっと冷たく感じるし、難しく感じられがちだ。 そして、より自分の立ち位置や視点をクリアにすることを求められる作業でもある。 でも、アテンションエコノミーの檻の中で暮らしていると、受動的に無限のコンテンツを浴び続けることでしか自分を満たせなくなってしまう。 果たしてそれでいいんだろうか。 そう考えて立ち止まった時に、この本と出会った。 批評の持つ視点や、そこから形作られる自分だけのものの見方は、きっとこの世界を泳ぐための武器になる。 それに。 わたしは何かを綴る者のほんの端くれとして、コンテンツを生み出す人たちをとても尊敬している。 彼らが何ヶ月も、何年も、時には何十年もかけて産み出したものを簡単に流し込みたくないのだ。それは才能へのリスペクトだと信じたい。 もう一度、しげしげと表紙を眺める。 ふつう、がわざわざ平仮名で色まで変えて強調されていることに、少し笑ってしまう。 良いことを言っているのに、一見するとちょっと煽っている。 そこに薄らとアテンションエコノミーの亡霊を見なくもないのだが、 共鳴を生み出す語りの仕掛けや、大島さんの戦いの姿勢含めて、なんだか、結構嫌いじゃないかも。 そして何より、自分の力で観て、自分の力で語ることは、やっぱり楽しいのだと思った。
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池澤春菜『わたしは孤独な星のように』。 こんなに自在に「語りの声」を変えられる書き手がいるのか、と圧倒された。 いくつものことばの世界を行き来し、出会ったことのない人たちの声を聞かせてくれる。 彼女は、そんな書き手だ。 詩情豊かに歌い上げたと思ったら、ユーモラスで疾走感のある語り口が顔を出したり、表情がくるくる変わる。 『いつか土漠に雨の降る』が、やさしく切なく、個人的にはいちばん好きなお話。 表題作の『わたしは孤独な星のように』は沁みるように情緒が揺さぶられる短編で、こちらも印象的。 湿度がまたがらりと変わり、詩情豊かに、歌い上げるような文体で綴られる冒頭の『糸は赤い、糸は白い』にも衝撃を受けた。 疾走感のある『あるいは脂肪でいっぱいの宇宙』も語り口からして異彩を放っており、面白い。 これまで、SF作品を読むとき、導入で世界観に入り込めないことも多かったけど、ユニークかつシンプルに世界法則が展開されていて、美しかった。 それぞれの世界が別の軌道を美しく描いている。語り部としてのことばの操り方も自在で、読者を飽きさせない。 地球とは遠い物理法則が働く世界や海、コロニー。さまざまな暮らしがそのまま綴られているような感覚すら受けてしまうから不思議。 太古の昔、人々は夜空に瞬く星を結び、いつしか思いを馳せるようになった。 やがてそれは神話になり、それぞれの場所で、それぞれの語り部によって、何千年の時を超えて語り継がれている。 どこかの誰かたちによって連綿と紡がれる、たわいもないおしゃべりを、わたしは愛おしいと思う。 #読了#
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