池澤春菜『わたしは孤独な星のように』。
こんなに自在に「語りの声」を変えられる書き手がいるのか、と圧倒された。
いくつものことばの世界を行き来し、出会ったことのない人たちの声を聞かせてくれる。
彼女は、そんな書き手だ。
詩情豊かに歌い上げたと思ったら、ユーモラスで疾走感のある語り口が顔を出したり、表情がくるくる変わる。
『いつか土漠に雨の降る』が、やさしく切なく、個人的にはいちばん好きなお話。
表題作の『わたしは孤独な星のように』は沁みるように情緒が揺さぶられる短編で、こちらも印象的。
湿度がまたがらりと変わり、詩情豊かに、歌い上げるような文体で綴られる冒頭の『糸は赤い、糸は白い』にも衝撃を受けた。
疾走感のある『あるいは脂肪でいっぱいの宇宙』も語り口からして異彩を放っており、面白い。
これまで、SF作品を読むとき、導入で世界観に入り込めないことも多かったけど、ユニークかつシンプルに世界法則が展開されていて、美しかった。
それぞれの世界が別の軌道を美しく描いている。語り部としてのことばの操り方も自在で、読者を飽きさせない。
地球とは遠い物理法則が働く世界や海、コロニー。さまざまな暮らしがそのまま綴られているような感覚すら受けてしまうから不思議。
太古の昔、人々は夜空に瞬く星を結び、いつしか思いを馳せるようになった。
やがてそれは神話になり、それぞれの場所で、それぞれの語り部によって、何千年の時を超えて語り継がれている。
どこかの誰かたちによって連綿と紡がれる、たわいもないおしゃべりを、わたしは愛おしいと思う。
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読了#