Register and share your invite link to earn from video plays and referrals.

クレア|日常の違和感言語化係
@kureakurea01
日常の「ん?」を文学・物語・推理・学びへ。仕事、人間関係、都市伝説、ニュース、投資、食に潜む、まだ名前のない違和感を拾い、日常と感情の翻訳をする名もなき社説執筆者です。誰かが言葉にできなかった感情を、世界中にいる誰かの心に届く物語へ。あたしは日本も世界も大好きです。
Joined September 2023
2.4K Following    49.9K Followers
店の奥から運ばれてきた白焼きを見て、隣の客が小さく言った。「ずいぶん、無防備なうなぎですね」確かにそうだった。蒲焼きのような艶もなければ、甘い香りで人を振り向かせることもない。白い皿の上で、塩とわさびと大根おろしを従え、ただ焼かれた身のまま横たわっている。けれど箸を入れると、ふっくらした身の奥から、脂の甘みがゆっくり現れた。  塩を添えれば輪郭が立ち、わさびを置けば、濃厚な脂の中に涼しい風が通る。 大根おろしは、次の一口のために舌を静かに洗ってくれた。 白焼きは、最初から好かれようとしていない。 タレで記憶に残ろうともせず、香りで食欲を急かすこともない。こちらが丁寧に味わった分だけ、隠れていた旨みを少しずつ返してくる。 人間も、本当に深い人ほど似ている。初対面では派手さがなく、言葉も少ない。だが、長く付き合うほど、飾らない優しさや誠実さが滲み出てくる。 白焼きとは、第一印象で勝とうとしない料理である。 それでも最後には、濃い味より長く心に残る。 本物には、自分を大きく見せるためのタレなど必要ないのである。
Show more